ドワンゴは3月26日、伊DigitalVideoから買収したアニメーション制作ソフト「Toonz」をオープンソース化した「OpenToonz」を無償で公開した。長年、スタジオジブリが制作過程で利用し、独自にカスタマイズした機能「Toonz Ghibli Edition」を搭載するほか、ドワンゴが開発したエフェクト機能なども盛り込む。
デジタル作画の段階から、最終的な画面を組み立てる「撮影」まで使えるソフトウェア。オープンソースで公開するため、ライセンスに基づいて自由にソースコードを改変し、商用・非商用を問わず、無料で利用できる。プロの現場に限らず、個人制作や学校教育など、さまざまな場面での活用を見込むという。
デジタルペイントは、境界線上のピクセルのギザギザを目立たなくする「アンチエイリアス」機能を搭載するほか、絵とパレットのデータを独立に表示し、仮色での塗り作業を行える。
撮影の工程では、タイムシート型(時系列)のインターフェースを採用。ノードツリー型のGUI(Graphical User Interface)でエフェクトの合成を手軽に行えるようになっている。解像度(dpi)を考慮した実寸サイズで画像を取り扱うことも可能だ。
画像処理用プラグインエフェクトSDKも公開し、誰でもエフェクトを追加できる。無償公開に合わせ、ディープラーニングを応用した画風変換、ケレン味のある入射光表現、波ガラス表現――といった、ドワンゴが開発したエフェクトも提供する。
スタジオジブリが社内開発したスキャンツール「GTS」も同時公開し、手書きの作画データを取り込んで使うことも可能だ。ラスター/ベクター両方の作画形式に対応し、日本語版へのローカライズも完了している。
オープンソース化することで、映像表現に関する企業や大学の学術研究と、アニメーションの現場をつなぐ新しいプラットフォームを作れないか――ドワンゴの技術コミュニケーション室の清水俊博室長はプロジェクトの意図をこう語る。ドワンゴとしても「社内で長年研究してきた映像関連技術をオープンの場に出せないかと検討してきた」という。
映像表現の技術や研究は進んでいるものの、多くのアニメーションの制作現場では研究開発にコストを割く余裕は乏しく、「最新の技術をいち早く取り込むことは難しい」(清水室長)のが現状だ。「OpenToonz」によって、研究者が成果を「プラグイン」として提供し、アニメーションの現場が使い心地をフィードバックする――というエコシステムを形成する狙いという。
「価格の問題もあって、これまで国内で使っていたのはスタジオジブリくらいだと思う。既存の有料ツールに使っていた分を、オープンソースのカスタマイズに割いてもらって、より表現方法が豊かなアニメーションを作ってもらえれば」(清水室長)
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