今回のサービスの実施プラットフォームになったpixivの佐久間仁美さんによると、利用者の約7割はスマートフォンからアクセス。「友人とLINEのメッセージを送り合うような感覚で、仕事の合間などに素子と会話している人が多いのでは」という。「毎日ログインして15時間以上会話したり、1日に5800回やり取りしたりしているユーザーもいる」(佐久間さん)。
1番多かったユーザーの言葉は「愛している」(8月8日時点で約4万8000回)で、ドMの人が言いそうな「ありがとうございます!」などの言葉は実は少ない。「ドMの人がターゲットになったかと思っていたが、そうでもなかった」と佐久間さんは振り返る。
なぜ、ドSなキャラクターを人工知能のモデルに選んだのか。井上さんは「人工知能で何かエンターテインメントをやろうとしたとき、よく分からない“無味無臭”のキャラクターでは何も面白くない」と話す。「どんなことに対してもニコニコしているキャラクターよりも、素子のように個性が振り切れていて、コミュニケーションを重ねると感情が変化するほうが、私たちのプロジェクトに向いていた」。
素子の人格を再現するのに使われているのが、ソニー・ミュージックエンタテインメントと言語理解研究所が共同開発しているAI「PROJECT Samantha」だ。言語理解研究所が開発したAIエンジン「K-laei」を搭載し、ユーザーの言葉に込められた意図を読み取る。
例えば「車に当たった」という発言からは「痛い」「悲しい」「悪い」などの意図を抽出し、「宝くじに当たった」からは「うれしい」といった意図を引き出す。読み取る意図のバリエーションは10万種類以上あるという。こうして読み取った1つ1つの意図に対し、AIがユーザーに返す言葉は開発者側が事前に用意しておく。
「同じ意図を読み取っても、応答内容の違いによってキャラクターの人格を表現できる」と言語理解研究所の結束雅雪さんは話す。例えば「車に当たった」という発言に対し、一般的なキャラクターの場合は「車を運転するときは気をつけてね」「けがしなかった? 大丈夫?」などと返事するが、罵倒少女は「慰めてほしいのか? そのいじけた根性、たたき直してやる」と返すことで、人格の違いを表現しているという。
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