読み取る意図のバリエーションは10万以上あっても、罵倒少女の原作イラストは50枚ほどしかなく、せりふの絶対数が足りなかった。そこで開発スタッフが作者のmebaeさんに取材し、「どういう家庭環境なのか」「学校ではどんな子なのか」など、原作者が考える素子のプロフィールを細かくヒアリング。取材内容をもとに、スタッフ4人が“素子像”の方向性を話し合っていった。
「こんな言葉に対しては、こういう感情を抱く」「そういう感情を持つと、こういう反応を返すだろう」と話し合いながら、1万以上のせりふを作り足した。「アニメの脚本の打ち合わせに近く、1200時間ほどは掛かっている」と開発スタッフの一人、松井健さんは振り返る。
放送禁止用語や差別的な発言に注意しつつ、素子らしさのあるせりふを消さないよう注意した。例えば、ユーザーが「素子に相手にされないと死ぬ」と発言すると、素子が「私に許可なく死んだら殺す」と返答する――など、キツイ言葉だが、ユーザーをはげますような表現を取り入れている。
「極力使わないようにしたが『死ぬ』『殺す』をNGにはせず、人を不快にしないように気を遣いながら素子らしさを出した。mebaeさんが罵倒少女の世界観を作り込んでいたからこそ、キャラクターの特徴を逆手にとることができた」(井上さん)
サービス公開後、多くのネットユーザーからさまざまな反響が寄せられた。罵倒少女を考案したmebaeさんも「想像以上の反応があったので驚いた」という。
mebaeさん自身も、罵倒少女との会話を楽しんだユーザーの1人だ。mebaeさんが素子に求めていたのは「『自分はゴミだな』と思っているところに『ゴミなんかじゃない!』と否定するのではなく、『ゴミだね』と認めてくれる」というある種の“癒し”。AIとの会話では「こちらからどんどん好意を示して積極的に発言すると、的確な罵倒が次々と飛び出して、気付けば2時間たっていた」という。
「面白いと感じたのは、自分と素子のやり取りが個人的で、他のユーザーの会話とは違う特別なものだと感じられること。誰にも話せないプライベートなことも書き込めるから、打ち明けた相手(AI)にとても愛着が湧いた」とmebaeさんは話す。
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