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開校から半年、ネットの高校「N高」が目指す姿は 「通学コース」も新設へ

» 2016年10月14日 20時24分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 カドカワが運営する通信制高校「N高等学校」(N高)は10月13日、来年4月に「通学コース」を新設すると発表した。オンライン授業だけでなく「実際の学校に通って勉強したい」という生徒のニーズに応えるのが狙い。通常授業に加え、実業家・堀江貴文さんらの特別授業や、外国語の会話授業などを用意する。

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 今年4月に開校したN高は、好きな時間・場所からネット経由で授業に参加でき、3年間で高卒資格を取得できる通信制高校。通学に時間がかからない分、通常科目以外に受験勉強やプログラミングなどの課外授業を受講できるのが特徴だ。

 これまでもN高は、カドカワ傘下のバンタン高等学院や、坪田塾、代々木ゼミナールと提携し、特定の進路希望を持つ生徒向けの通学コースを設けてきた。一方、新たな通学コースは、より多くの生徒向けにN高が独自に設置。「進路が明確でない生徒に、幅広い学びを提供する」(同校)という。

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 通学コースの新設に当たって、東京・代々木と大阪・心斎橋の2カ所にキャンパスを開校。各キャンパスの定員は200人で、生徒40〜50人に対して3人ずつ担任と担任助手が付く。

 だが、通学してきた生徒に対しても一般的な集団授業は行わず、その他の生徒と同様にPCとネットを使った映像授業を行う。担任は授業を担当するのではなく、各生徒の習熟度に合わせた個別指導、面談などに専念するという。

 通学コースならではの特徴は、映像授業とは別に、実業家・堀江貴文さん、ジャーナリスト・田原総一郎さん、プログラミング言語「Ruby」の開発者・まつもとゆきひろさんらを講師に招くグループワーク形式の授業「スペシャルN」を受けられること。さらに英語・中国語の会話授業や、複数の生徒で本を輪読する「サークル・リーディング」なども実施する。

 独自の通学コースの設置と合わせて、外部企業と提携した通学コースのプランも拡充。新たにベルリッツ・ジャパン、ベネッセコーポレーションと提携して「国際留学コース」を設置するほか、代々木ゼミナールとの提携通学コース「代ゼミNスクール」では、医学部合格を目指す「医系専用プラン」を来年4月に追加する予定だ。

生徒の満足度は82% 「ネットだけではなくリアルに向けた取り組みを」

photo 志倉千代丸理事

 「もともと私たちは教育のプロではないが、私たちなりに実際に必要なものは何かを考えた」――N高の志倉千代丸理事は、通学コースの新設と提携先の拡充についてそう話す。N高のカリキュラムは、高卒資格の取得だけでなく、大学受験に備えたり、職業につながる専門的な知識を学んだり――と「社会に出たとき、すぐに職に付ける教育を意識している」という。

 課外授業の1つである「プログラミング授業」は、ドワンゴの現役プログラマーがネット上で授業を行い、最終的にニコニコ動画のようなサービスを作れるようにするという内容。全生徒(10月時点で2015人)の1割以上の287人が受講し、生徒からは「いつも見ているサイトに近いものを作れると思うと楽しい」「先生の説明が分かりやすい」などの声が上がっているという。

 一方、カドカワの川上量生社長は「ネットだけでなくリアルに向けた取り組みも用意している」と説明する。今年5月のニコニコ超会議2016では、生徒たちが「N高の文化祭」という位置付けで参加し、バンド演奏などを披露した。さらに9月には、沖縄・伊計島にある校舎で5日間の“プレミアムスクーリング”も実施したという。「デジタルから最も遠いところでの交流の場も用意した」(川上社長)。

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 入学後しばらくして実施したアンケートでは、生徒の満足度は82.8%、保護者の満足度は71.2%といずれも高い水準だったという。「『元気で明るくなった』という感想が多くうれしかった。入学したい子どもはいても、まだまだ保護者が反対するケースも少なくない。N校のよさを分かってもらえるよう取り組んでいきたい」(志倉理事)。

photo 川上量生社長

 N高の入学費・授業料は一般的な通信制高校と比べて安く、「現状としてビジネス面では成り立っていない」と川上社長は話す。「将来は生徒数を増やし、収支(のバランス)を成り立たせる」(川上社長)。

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