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» 2016年10月31日 13時40分 公開

立ちどまるよふりむくよ:Macintoshの起動音を作った人たち (2/2)

[松尾公也,ITmedia]
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Power Macintoshの起動音はどう演奏されたか

 今から22年ほど前、このようなビデオを作った。

photo 「Power Macintoshの起動音をギターで弾く: How to play Power Mac with acoustic guitar」

 これは、1994年ごろに、当時ぼくが編集長をやっていたMac専門誌MacUserに付属していたCD-ROM「MacBin」に収録したコンテンツの1つ。Power Macintoshの起動音をアコースティック・ギターで再現する、というものだった。当時、AppleはMotorolaの68040からIBMのPowerPCへCPUを載せ替えたPower Macintosh 6100/7100/8100という3モデルを発売し、これならIntelにパワーで勝てるぞと意気揚々だった。

 このビデオでは、ギターのコードフォームと奏法(ハーモニクスを使う)、エフェクターの設定方法が、ミディー・ペイジにより解説されている。冒頭に不要とも思えるテルミンの演奏を入れているミディー・ペイジは、Mac業界のイベントであるMac'n Roll Nightというバンド合戦にMacUser誌から出場していたときのバンドCheap Purpleのメンバーだった(編集部員ではない)。

 この当時は知らなかったのだが、このときのPower Macintoshの起動音は、ヤマハの12弦アコースティックギターを使い、スタンリー・ジョーダンが弾いたものだという。ジョーダンは1985年にデビューした、タッピングの名手として知られるジャズ・ギタリスト。6弦すべてを4度に設定する変則チューニング(1弦と2弦が半音高い)しているそうだ。Power Macintoshでもこのチューニングを使ったかどうかはわからないが、もしそうだとしたら、タッピングの使用を含め、その演奏方法は22年前に想定したものと違っているかもしれない。

消える音、うるさくなる音

 Macの起動音は何度も変わっている。だが、一番長く使われたサウンドを作ったのは、ジム・リークスだ。Quadra 840AVという、Power Macintoshの直前である1993年に出たデスクトップマシン向けだ。このMacintoshはDSPを備え、アンプ、スピーカーもいいものを装備していたので、リークスはMacintosh II以降の起動音から変えたかった。単純な3重和音の音が濁っていて気に入らなかったのだ。

 ちなみにそのサウンドを作ったマーク・レンズナーは現在Googleに勤務しているが、テスラコイルとロボットベーシストに演奏させるというおもしろい試みをしている。

 新しい起動音を提案したものの、みんな「前のままでいいじゃないか」と動かない。だがリークスはあきらめず、起動用ROMの担当者に直談判し、自分で作ったサウンドを入れることに成功した。2.5秒の音をシステムエラーでやむを得ず再起動する人にも不快ではないものにしなくてはならず、いろいろ試行錯誤して、最終的にCメジャーコードにした。その後、前述の初代Power Macintosh起動音はスタンリー・ジョーダンだったが、これは不快ともとれるサウンドだったので、自分が作った840AVのサウンドに戻されたのだと説明している。

 そしてスティーブ・ジョブズが復帰してからは、彼の起動音にすべてが統一されることになった。これはスティーブの判断だろうとリークスは考えている。そして、2012年には米国で音の登録商標に認定された

 ジョブズ不在時に作られたサウンドではあるが、ビートルズの「A Day In The Life」の最後の荘厳なピアノをイメージしたというサウンドを気に入ったのかもしれない。

 しかし、その起動音も新しいMacBook Proからは取り去られてしまったようだ。

 ネットではMacを象徴するサウンドが消えてしまうことを嘆くユーザーも多いが、彼が作ったサウンドで、特に日本ではその音量が増しているものもある。

 iPhoneのカメラで使われているシャッター音だ。

 これはもともとリークスがMacのスクリーンキャプチャ用に作成した音で、愛用のキヤノンAE-1のシャッター音をレコーディングしたものだという。

 日本人がシャッター音をでかくしたがるのも当然かもしれない。

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