「条件分岐してゴールまで辿り着いた」「繰り返しを使えるようになったから短いプログラムにできた!」――そんな言葉が飛び交う小学校がある。大阪府寝屋川市立石津小学校だ。
プログラミング教育事業を行うキャスタリアとNTT西日本は共同で、石津小でロボットプログラミング教育モデルの実証実験を行った。この取り組みは、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」(2016年度)事業に採択されたもの。Ozobot bit(オゾボット)という小さなロボットを使って、10月から12月まで計5回の授業が行われた。
今回取材をしたのは、その最終回である12月9日。授業は5年生のクラスで、各班に分かれてそれぞれに組み上げたプログラムをみんなで見せ合ったり発表したりするというものだった。
Ozobot bitは、ライントレースロボット。紙やスマートフォン、タブレット上に描かれた線に沿って動くロボットだ。スイッチを入れれば線の上を自動で動くが、OzoBlocklyという専用の開発ツール(無償)でプログラムを組めば、Ozobot bitに条件を与えてコントロールできる。プログラムはScratch(スクラッチ)のようにブロックを組み合わせる形の「ビジュアルプログラミング」。ロボットにはカラーセンサーが付いており、カラーを選択して命令を送ると、その命令に沿った動きをするようになる。
今回のテーマは、「たこ焼き屋さんからたこ太郎くんにたこ焼きを届けよう」。紙の左上に書かれたたこ焼き屋さんから道を辿り、途中、「タコ」「マヨネーズ」「タマゴ」「小麦粉」「ソース」と材料を集めて、たこ太郎くんのところまで届けるという課題だ。
5年1組と2組、それぞれのクラスでは1チーム3〜6人の班に分かれて思い思いのルートを作成。「赤い交差点では右」「青い交差点では左」などと色に条件を与え、ゴールとなるたこ太郎くんのところまでのプログラムを組んで発表した。
印象的だったのは、先生が「赤の交差点ではどういう動きにしたのか教えて?」と尋ねたときの生徒の答えだ。生徒は右や左と答えるのではなく、「これを見て!」とプログラムを指差した。その生徒は、「どう動くかはプログラムに書いてある」ということを完全に理解していたのだ。これには先生も不意打ちされた様子だった。
また、授業では生徒たちが組んだプログラムの中から「特徴的なプログラム」を紹介する場面も。自分のチームのプログラムとどう違うのかを尋ねられると、「最初から書いてあった黒い線にも条件分岐を付けていた」「距離は長いけれど、少ないブロックでプログラムが組まれていた」などの発言があった。
もう1つ注目したいのが、今回授業をしている“先生”の存在。実はこの授業を担当しているのは全員、ボランティアとして集まった地元の大学生、高専生、専門学校生なのだ。各班には「メンター」と呼ばれるサポート役の先生が付き、授業はメンターを代表する毎回違う「メインメンター」が進める形式。彼女、彼らの“先生”としての育成は主にキャスタリアが担当し、「地域完結型プログラミング教育モデル」に挑戦したという。「次期学習指導要領には、『社会に開かれた教育課程』という言葉が加えられている。これは、社会にいる地域人材の活用という意味も含まれている」(森本朋美校長)。
授業後のアンケートをこっそりのぞくと、「身の回りにはたくさんのプログラムがあるのに、プログラミングということを知らなかった」「まだまだやりたくて、さびしいです。しょう来の夢はプログラムを作る人になりたい」といった感想が見えた。生徒たちはこのあと先生たちと最後のあいさつを交わすのだが、一部の生徒が先生を教室から出すまいと通せんぼしていた。その先生と生徒の姿が、プログラミングへの距離感を表しているようだった。
(太田智美)
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