薄い回路をパーカーの内側に張り付け、モバイルバッテリーで温められる“暖房ウェア”や、縦笛を演奏している指の動きをセンサーで測定する手袋など、近未来を予感させる「衣料型ウェアラブル」が「第3回 ウェアラブルEXPO」(1月18〜20日、東京ビッグサイト)に多数出展され、来場者の注目を集めている。
ヤマハとKAJI NYLONは、導電性と伸縮性を両立したというシート状のセンサー「Stretchable Strain Sensor」を参考出展。センサーを手袋に張り巡らせ、指の動きをリアルタイムで測定する。センサー本体はヤマハ、伸縮する配線部分はKAJI NYLONがそれぞれ手掛けた。
ブースでは、センサーを搭載した手袋をはめ、縦笛を演奏するデモを実施。動かす指の種類に応じ、演奏者の背面のディスプレイにさまざまな色の流れ星を表示したり、着用している服のLEDライトの色を変化させたりする。
このほか両社のブースでは、ケーブルに伸縮配線を採用したイヤフォンや、センサーを編み込んで体全体の動きを測る衣服を展示している。
旭化成は伸縮電線「ROBODEN」(ロボ電)を出展し、衣服に配線を沿わせてLED電球を光らせたり、肩に低周波治療器(マッサージ器)を取り付けて動かしたりするデモを披露。同社が昨年出展したものを改良し、伸縮性に優れるだけでなく、電気抵抗が小さい電線を開発したという。「昨年はLED電球など省エネルギーのものが対象だったが、大きな電力を消費するマッサージ器などにも対応できるよう改良した」(説明員)。
電線は、ゴム状の繊維を軸に、数本の金属導体を巻き付けて作成。伸縮させても導体同士が重ならず断線しにくいほか、折れ曲がったところにもたるませずにぴったり配線でき、配線が周囲に引っかかるのを防げるという。
導電性ペーストを使って衣料型ウェアラブルの制作を試みている企業もある。接着剤で知られるセメダインは、室温でも固まる導電性ペースト「セメダイン SX−ECA」を使って開発した暖房ウェア「HEATER PAKAER」(ヒーターパーカー)を参考出展している。
ウレタン製シートに導電性ペーストを塗り、ヒーターの回路を作成。完成したシートをアイロンの熱でパーカーの内側に貼り付けた。モバイルバッテリーで通電すれば、瞬時にヒーターが温かくなり、内側から体を温めてくれる仕組みだ。「アイロンで回路を接着できる手軽さが、未来の衣類を変える可能性がある」(同社)という。
シートは布だけでなくテーブルや壁などに張ることもでき、同社ブースでは、冷めた弁当を温められるプラスチック製の容器も展示している。「ウェアの販売予定はないが、回路を設計できる企業と協力し、アイデア次第でさまざまな提案をしていきたい」(説明員)。
東洋紡は、張り付けた導電性フィルムで心電図を測定できる衣服「COCOMI」を出展。厚さが0.3ミリと薄く、導電性繊維と比べると周辺部との段差がない分、違和感のない自然な着心地になるという。
「ベルト型のものだと体が締め付けられたり、ペースト状のものを直接肌に塗るとかぶれたりするが、その心配がない」(説明員)。例えば、運転中のドライバーの心電図データを測定し、眠気を検知するなどの活用を考えているという。
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