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キンコン西野氏が火種 「コンテンツ無料化は、作家を殺す」のか? マンガを例に考える(2/4 ページ)

» 2017年01月24日 10時46分 公開
[新崎幸夫ITmedia]

 このように、「ネットではタダなのに、紙の単行本が平然と売られており、しかも売れている」――という事例は、他にもある。有名なところでは、マンガアプリ「comico」から誕生した作品、「ReLIFE」もそうだ。

画像 comicoの「ReLIFE」公式サイトより

 ReLIFEも、comicoに行けば無料で読めるにも関わらず、なぜか、紙のマンガも売れた。アプリでは縦読みで、紙では横読みにレイアウトを変えたなどの工夫もあったようだが、本質的には同じ作品だ。どうやら、熱量のあるファンが売上に貢献したようで、こちらは2016年に「累計発行部数、100万部突破」とアナウンスされている。

 マンガアプリ発の単行本に関しては、他にも枚挙にいとまがない。マンガというのは、「一物二価」が成り立つ、不思議な業界になっている。

十分稼いだから、無料にする

 次に紹介したいのは、ある程度収益が出た作品を、さらに無料化して、追加収益を発生させたケース。個人的には、「女帝」が面白い取り組みだと感じる。

画像 「女帝」は多くのサイトやアプリで無料公開されている(画像は「マンガ図書館Z」より)

 女帝は、「週刊漫画TIMES」に連載された作品だが、媒体としては青年誌であり、あまり若い女性向けとは言えない。さらに、ストーリーも「銀座のホステスが知恵と度胸、さらには枕営業も駆使して(!)成り上がる」……という、なんともおじさん好みのストーリーだ。

 しかし女帝はテレビドラマ化などもあり、電子書店での販売にも注力したことで、2007年には「めちゃコミック」の年間ランキング1位を獲得。さらに2012年あたりからはじまった「無料マンガアプリ」ブームにもうまく乗り、あちこちの無料アプリで閲覧できるところとなった。

 この一連の展開で、若い女性ファン層を開拓したのが、注目すべきポイントだ。筆者の周りにも、「『女帝』は読んだ、面白い」と話す20代女性が複数いるし、業界関係者によれば、若者向けアプリでかなり善戦しているようす。どうも、十分稼いだコンテンツを、さらに無料化して追加収益を得る……という作戦のようだ。

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