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» 2017年01月30日 09時00分 公開

「無料モデル」は難しい 少なくとも「物語」においては(4/5 ページ)

[堀田純司,ITmedia]

 読者は無料で読むことができる。作者はより自由に作品を発表することができる。そうしたマンガアプリとして注目を集め、単行本が100万部のヒット。さらにアニメ化、映画化も行われた学園マンガ「ReLIFE」(夜宵草)を送り出した「comico」も、2016年に一部有料化を導入。一部とはいえ有料化はユーザーの間で混乱もあったようです。

画像 累計100万部を突破した「RELIFE」

 comicoに限らず、「無料」をアピールするアプリも、実際のところ、限られた話数や期間、無料であって、その後、課金に誘導されるものも多い。また、全話無料で公開するのだけど、先を早く読みたければ課金というモデルもあり、日本よりも市場のシュリンクが早かったため、デジタル配信の試みも一足先に行われていた韓国では、これが結構売れるといいます。ちなみに韓国の場合も、無料公開、その後、有料への移行はなかなか難しかったそうです。数多の無料Webサービスで見てきたパターンですね。

 では、かつて「ガンボ」が紙で試みた広告収入で収益化を目指すのはどうか。ただ「物語」というものは情報に比べて、アテンションを爆発的に集めるのは得意ではないらしい。しかしそのかわりに長い寿命を持つという特徴があるのですが、広告収入でオリジナル作品を製作するコストを維持するのは難しい。

 ただ、すでに単行本を刊行し収益化を終え、コスト回収が終わった作品を公開するのであれば成立するかもしれません。

 実際に「3年奇面組」(新沢基栄)など、現在は収益化を終え、絶版になったマンガに広告を入れて配信する「マンガ図書館Z」のような取り組みも行われています。この場合、無料配信は、既存の生態系の、いわばサブシステムとしての役割を果たすことになります。「マンガ図書館Z」でも、既存の出版社と競合するものではないことは特筆してアピールされてきました

画像 「マンガ図書館Z」より

「物語」を収益化する難しさ

 以上はマンガでの取り組みですが、もともと日本の出版界の場合、マンガが娯楽の王者。これまでにふれた試みが実践できるのも市場が大きいマンガだからこそで、Web to Paperの取り組みもシステムとしてはなかなか定着しない。

 もちろんプラットフォームに投稿、無料公開し、その後、ヒット作となることはあります。無料公開が宣伝、新規ユーサーの獲得につながる、ということもあるでしょう。ですがその場合、収益化は既存のシステム、たとえば出版社のようなシステムで行うわけで、結局のところ「現代では、個人でも作品を発表し、収益化を目指すことができるようになったのだ」という話に行き着きます。

 それ自体は、もうずいぶんと長いこと言われてきたわけで、コンテンツというものは無料で公開すれば動くというものではない(自分自身で経験済み)。またとにかくバズれば動くというものでもない。なにか特殊な感情のスイッチの押し方をする必要があるらしい(悲しいことにこれも実体験で経験済み)。成功するのもしないのも結局は個人の才能と努力。そうするとロマンも急速にしぼんでいきます。

 もっとも既存のエコシステムも、なかなか立ち行かなくなってきた。成功の再配分という機能を担ってきた出版社からも余裕が失われてきています。

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