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» 2017年01月30日 09時00分 公開

「無料モデル」は難しい 少なくとも「物語」においては(3/5 ページ)

[堀田純司,ITmedia]

 では「初出公開は無料。そこで収益は見込んでいない」ということであれば、いっそ最初から描き下ろしで、単行本を刊行してしまうのはどうでしょうか。小説ではふつうに行われていることです。

 もっともマンガは、文字にくらべて製作にコストと時間がかかります。そのために原価設計が難しいのですが、ハーパーコリンズ・ジャパンが刊行する「ハーレクインコミックス」のように、描き下ろしマンガ単行本のレーベルを運営している例もあります。

デジタルは作家を育てられるか

 しかし、なのですが、もともと雑誌は、それ自体が商品であるだけではなく「育成の場」という機能も大切です。新人は作品を描くことで成長する。掲載されることを目指し、企画を練り、そして執筆。それが公開され読者の目にふれることで成長するし、またベテランの作家でも、雑誌があることで読み切りを描き、アイディアを確認することができる。また雑誌は、作品の「宣伝の場」としての機能も重要です。

 こうした雑誌の機能を、いかにデジタルに持ち込むことができるか。

 DeNAが出版社と組んで提供する無料アプリ「マンガボックス」では、「少年マガジン」誌出身のキバヤシシン氏が編集長に就任。その展望として、かつて雑誌が担ってきた「発掘、育成」にも力を入れると語っていました

画像 「マンガボックス」のアプリ紹介より

 また、Web公開では「新人作家の受賞作に突如大きな注目が集まる」といった、雑誌とはまた違う宣伝効果もあるそうです。

 雑誌の赤字を単行本の売り上げでおぎなう、と言っても、現代ではそれも厳しい。紙の雑誌→単行本化のエコシステムが回っているうちに、新たなモデルを確立したい。無料公開の試みからは、そうした各社の意図が伝わってきます。逆に言うと、現状、Webのシステムを回し、著者に原稿料を払うことができているのは、各社紙のシステムで培ってきたコンテンツ資産と収益があるからだろうとも感じます。

無料マンガアプリ、収益化の限界

 一方、Web公開ではなく、マンガ配信のアプリも登場しました。そうした中にはボーンデジタルでオリジナルマンガを製作し、無料で公開する試みも行われています。しかし、無料公開で会員を集めたとしても、収益化するには結局のところ、個々の作品単位で販売するか、有料会員制に移行するか。選択肢は多くはない。

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