そんなことを考えていたら、ちょうど日本科学未来館(東京・お台場)でAR・VRの展示物を見る機会がありました。そのデモ展示の1つに「HADO」という実際に体を動かすARゲームがあって、これを拡大解釈すればよいかなと。ヘッドマウントディスプレイ越しには、相手にビームを出しているように見えて、ビームをいかに避けるか。人間同士だけでなく、モンスターと戦うものもありました。
懸念していたのは、ダメージを受けたキャラのリアクションをどう表現するかでした。そうしたら、HADOのスタッフの方から、体にセンサーを装着していて、相手のビームが当たると振動するようになっていると聞いて「なるほどな」と思いました。
それとは別に、バンダイナムコエンターテインメントのVRゲーム「サマーレッスン」の開発チームや、「SAO」のPlayStation向けゲームスタッフにも相談したところ、登場キャラが武器を握っている感覚が必要だろうと。そこで、登場キャラにはコントローラーを持たせ、それがバイブレーションしてダメージを受けた感覚になるという設定にしました。劇中では一言も説明はありませんが、裏ではそんな設定を考えています。
――コントローラーのほかに「サマーレッスン」を参考にしたポイントは。
伊藤監督: 「サマーレッスン」を遊んでみて、女の子の目力があるなと。特に日本人は(恥ずかしさで)目を合わせづらいと聞いていましたが、確かに見られると圧を感じました。この感覚は、ユナ(※)に近づかれたアスナが驚いて逃げる――というシーンに生かしています。
(※)ユナ……「劇場版SAO」に登場するARアイドル。オーグマーを装着したユーザーからは、現実世界に重なるようにして見える。人工知能(AI)を搭載し、ARゲーム「オーディナル・スケール」の歌姫としても活躍している。
実際には感覚はなくても、目で見た光景と合うように、脳が勝手に補完しているような気がします。ユナからキスされても、実際には何も触覚はないはずなのに、脳が「感覚がない」という違和感を埋めるのではないかと。もしかするとコントローラーがぶるぶると震えているのかもしれませんが、それとは別に錯覚めいたものはあるかなと。
――痛みを感じる仕組みは。
伊藤監督: 痛みを感じる機能は、オーグマーには搭載していない設定です。そういう機能がないのに、モンスターの攻撃で登場キャラが吹っ飛んでいますが、それは(脳が錯覚して)自分たちで「ワーッ」と飛んでいるわけです。目の前に敵が勢いよく来ちゃうと避けてしまう。アニメとしては、それをやや大きく描いています。
「オーバーだな」と思われるかもしれないが、果たして本当にそうかなと(笑)。サマーレッスンをやってみて、あの子の視線から目をそらさずにいられるかなと思いますね。
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