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羽生三冠「もしも神様から一手だけ指し直す権利をもらえたら」──振り返るのは“あの対局あの一手”ニコニコ超会議2017

» 2017年05月03日 08時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 ドワンゴが主催する「ニコニコ超会議 2017」(4月29〜30日、千葉・幕張メッセ)で、プロ棋士の羽生善治三冠と加藤一二三九段の対談が行われた。司会は将棋ファンでもある芸能人のつるの剛士さん。

左から加藤一二三九段、つるの剛士さん、羽生善治三冠

 羽生三冠は、2016年に行われたドワンゴ主催の第2期叡王(えいおう)戦に参加し、準決勝で佐藤天彦名人に敗れた。叡王戦優勝者は2017年に行われる第2期電王戦で、山本一成さんと下山晃さんが開発する将棋AI「PONANZA」と戦う。史上初の七冠を達成するなどさまざまな記録で歴代1位の記録を持つ羽生三冠と、最強の将棋AIの対局が期待されていた。しかし佐藤名人が羽生三冠を破り、電王戦も第2期で終了となるため、公式の場での羽生三冠とAIの対局は実現しなかった。

 対談はニコニコ動画ユーザーからの質問に答える形で行われ、その中で「もしも神様から昔の対局を一手だけ指し直せる権利をもらえたら、どの対局のどの手を指し直しますか?」という質問があった。

 羽生三冠は、「一手詰めをうっかりして負けたことが一回あります」と切り出す。

羽生 普通だったら一手詰めは1秒立たないくらいで見つけなければいけないですが、さすがにその時は恥ずかしかったですし、血の気が引きました。王手をかけられて初めて、逃げる場所がないことに気付くってことがあるじゃないですか。あれを何十年ぶりかにやってしまいました。一手前に5カ所逃げられるところがあって、どこに行っても勝ちだったんですよ。

2001年9月1日の竜王戦 135手目(無料の棋譜サービス 将棋DB2から引用

つるの あー! 木村先生との!

(注:2001年9月1日の竜王戦、先手が羽生善治さん、後手が木村一基さんの対局。木村さんの5六銀に対し、6五にいた王は6四に逃げるが6五飛打で詰みとなる。)

つるの やはりそういう時、羽生先生でも「穴に入りたい」とか思うことはあるんですか?

羽生 将棋ってずっと優勢でも、最後の3分でミスして負けちゃうってこともあるじゃないですか。そういう意味では非常に過酷な競技というところもあるし、言い訳できないですね。

つるの 逆に言えば、そんなミスが1回しかないってすごいですよ。

羽生 いやいや、1回あるのも恥ずかしいですから。11手詰めとかなら別ですが、1手詰めはさすがにプロだったら普通は1秒で気が付かないといけません。

つるの でも、ものすごく失礼なことなんですが、将棋ファンとして安心するんです。「良かった、羽生先生も人間なんだ」って。

羽生 ミスはしてしまうものなので、ミスした後にそれを繰り返さないようにするのが大事だと思います。

加藤 でも羽生さんはすごいですよ。対局で負けてしまうとしばらく落ち込むのが普通ですが、羽生さんはすぐに次に生かそうと反省する。そこが羽生さんのただ者ではないところです。


 加藤九段は、「たくさんあって即答できない」としつつも、直近では14歳でプロ棋士となった藤井四段との対局、2016年12月の竜王戦第一局を選んだ。2五桂と跳ねてからの1筋の戦いで1四歩を怠っていなければ勝てていたのでは、と振り返った。

 また、他にも質問は多く寄せられていたが、質問ボックスからランダムに選ばれる形式ということもあり、AIとの対局に関する内容には触れられなかった。

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