テントウムシが柔らかい「後ろ羽」を折り畳んで、硬い「さや羽」の中に収納するメカニズムを解明したと、東京大学などが5月16日に発表した。人工衛星のアンテナや折り畳み傘などの展開方法に応用できるという。
テントウムシは、頑い「さや羽」と柔らかい「後ろ羽」を持ち、さや羽の内側から後ろ羽を素早く広げて飛び立つ。着陸時は広げた後ろ羽を折り畳み、さや羽に収納するが、その詳しいメカニズムは分かっていなかった。
研究チームは、内部の構造が見やすいように、紫外線硬化樹脂製の「人工さや羽」を作成し、テントウムシに移植。後ろ羽を折り畳む様子が透けて見えるようにし、高速度カメラで撮影した。すると、さや羽の内側曲面やエッジなどを利用しながら、背中でこすり上げて徐々に羽を中へと引き込む――という仕組みを確認できたという。
さらに、羽の折れ線部分の構造をマイクロCTスキャナで観察したところ、人工衛星用アンテナなどに使われる「テープ・スプリング構造」が存在することが判明。テントウムシはこの構造を利用し、飛行時の羽ばたきに耐えられる強度と、素早くコンパクトに折り畳む機能を両立していることが分かった。
研究チームは「テントウムシの後ろ羽は、進化の過程で『飛行』と『折り畳み』の機能が見事に融合されている」「硬いパーツをジョイントでつないで作る人工的な機構とは異なり、フレームの部分的な柔軟性が巧みに利用されている」と指摘。これらの仕組みは、人工衛星のアンテナ、傘や扇子などの展開方法の改善に生かせるとしている。
研究成果は、米国科学アカデミー紀要(電子版)に5月15日付(現地時間)で掲載された。
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