「あなたは、午前中に会話するとハピネスが高くなるタイプです」「6人以上の会議だとハピネスが上がる傾向があります」――日立製作所は6月26日、従業員の行動パターンから組織全体の幸福度(ハピネス)を計測し、人工知能(AI)がよりよい働き方を提案する社内実証実験の結果を発表した。AIのアドバイスを参考にした部署ほど幸福度が上がる傾向があり、そうでない部署と比べて業績(売上高)も上回ったという。
日立は、体の動きと幸福度に相関関係があるとして、加速度センサーなどを搭載した名札型ウェアラブルセンサーで組織の幸福度を測る技術を開発。被験者の首に装着したセンサーで行動パターンや対話相手などのデータを取得、同社のAI「Hitachi AI echology/H」で分析し、組織全体の幸福度向上につながる行動を個々人にアドバイスする仕組みを開発した。
アドバイスは「○○さんと会話を多めに行うとハピネスが上がりやすい」「午前中に多くデスクワークをした日がハピネスが高くなる」などと、職場でのコミュニケーションや時間の使い方などを助言する内容。被験者は、専用スマートフォンアプリでアドバイスを確認し、働き方の参考にする。
この仕組みを使い、昨年6月〜10月に日立グループ内の営業部門26部署、約600人を対象に実証実験を実施。その結果、同アプリの利用時間が長い部署ほど、利用翌月の幸福度の増加量が高いことを確認したという。
さらに、幸福度が上昇した部署では、実験の翌四半期(10〜12月)の受注額が目標から平均11%上回った。一方、幸福度が下降した部署では平均16%下回り、両者の間で27ポイントの業績差が出たという。
日立研究開発グループの矢野和男技師長は「業績につながる指標が、体の動きに現れていたといえる」と話す。日立の法人営業は「その日の営業活動がすぐに売り上げにつながるわけではない」が、タイムラグがある場合でも、幸福度が業績予想の指標になり得るという。
幸福度をアンケートで測る取り組みはこれまでもあったが「アンケートは、言葉の受け取り方が個人で違うなどして“主観的”な結果になる」(矢野技師長)という。新技術はセンサーやAIを用いて「客観的な指標で幸福度を測れる」としている。
日立は同様のシステムの導入や実証実験を、三菱東京UFJ銀行や日本航空など20社以上と共同で行ってきた。「システム自体を提供するか、コンサルティング事業として展開するか、最終的なビジネスモデルはこれから検討する」(矢野技師長)としている。
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