NECは7月19日、市販のペンで書いた点(ドット)を1つ1つ識別できる画像認識技術「マイドット」を開発したと発表した。肉眼では確認が難しいが、指紋のように個々で異なるインクの模様を判別する。小型の電子部品やチケットに、バーコード代わりに点を書き、照合することで製造履歴や本人の確認が可能。数年以内の実用化を目指す。
ペンで約1ミリの点を書き、市販の顕微鏡カメラで撮影。読み取った画像をクラウドにアップロードし、あらかじめ登録しておいた画像と1〜3秒程度で照合する。インク粒子の模様はランダムで、市販のプリンタでは解像度が低いために全く同じ模様を再現できず、複製は難しい。
従来の画像認識技術は、照合する物体の角、縁などの特徴を抽出し、その周辺の明暗から物体が向いている方向も判断し、画像が同じかを識別していた。だがインクの模様は、拡大すると角が多い上に、明暗から向きを判断するのが難しく、全ての特徴を照合しようとすると、処理に時間がかかったり、かえって精度が下がったりすることがあった。
新技術は、インクの模様の中で、明暗が偏っている部分など数百カ所の特徴に絞って照合し、処理の高速化、高精度化を図ったという。
NECは、同技術を小型の電子部品、入退場用チケットなどに応用し、バーコード代わりに活用する予定。同社のデータサイエンス研究所主幹研究員の石山塁さんは「専用のICカードを用意しなくても、所持品に点を書けばすぐに鍵やチケットになるのがメリット」と説明する。
石山さんは「指紋の“代わり”という考え方もできる」とも。「あるサービスを少し使うためだけに、一生変わらない指紋データを取られることに抵抗がある人もいるはず。インクの点なら、その日だけというように、使い捨てができる」
ただペンで書いた点は、こすったり削ったりすると、読み取りづらくなる可能性がある。「雨風にさらされたり、意図的に消したりすると使えなくなる。(数年以上、同じ点を使う場面を想定し)耐久性のあるインクを、パートナー企業と開発したい」(石山さん)
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