渡辺さんは06年当時を振り返り、「まるで訪問販売の押し売りのように、こんな情報は役に立ちませんかと常に監督に提案していた」と笑う。
アナリストはどんな情報を提供すべきか分からず、監督や選手もどんな情報が欲しいのか分からない状態。控えの選手が試合中のビデオ撮影係を担い、音声でプレイ情報を吹き込むなど、手弁当なアナログ作業も多かった。
ゼロからのスタートだったが、渡辺さんは毎日のように練習や試合に同行。チーム内で密にコミュニケーションを取る中で、徐々に信頼を勝ち取っていく。
「相手に伝わることがゴール。監督や選手に、データ活用が難しそう、面倒くさそうと思われたらそこで終わり。実際にコートの中でどう役立つかを実感してもらうことを常に心掛けていた」
一方的に話しても選手の身にならないため、わざと余白の多い資料を渡してペンでメモを取らせるなど、記憶に残るよう工夫したこともあった。
データを活用する風土が根付いたいま、チーム内で最も使われているのが、スマートフォンやタブレットで試合映像を確認できる専用アプリだ。映像と入力データを結び付けられ、例えば「A選手」「アタック」などで検索すると、その特定のA選手がアタックしたシーンだけを順に再生できる。
このアプリは日本独自で開発したもの。ネット動画視聴サービスのように直観的な操作で巻き戻し/早送りなどもできるので、選手たちも移動時間などで気軽に利用しているという。
「バレーは情報戦。監督がコートにIT端末を持ち込めて、自由に情報共有できるので、アナリストが介入できる余地も非常に大きく、やりがいがある。戦略と戦術で優位に立ち、身長差の壁を克服したい」
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