話題のネットサービス「VALU」。「よく分からないけど、面白そうだし、もうかりそう!」――そう思って飛びついてしまった筆者は、その数週間後、激しく後悔し、やめる方法を模索し始めた。
「行きは良い良い、帰りは怖い」。そんなメロディが、筆者の頭をこだましている。
VALUには(1)VALUを売る、(2)VALUを買う――の2つの参加方法があります。この記事では(1)に焦点をあて、「VALUをやめる」=「VALUを売ることをやめる」「VALUが売れた後にやめる」の意味でレポートします。
VALUは、今年5月31日にスタートしたばかりの、金融とITを融合した「FinTech」と呼ばれるサービスの1つだ。誰でも自分の「価値」を売り出し、それを他人に買ってもらえる――というものだ。
ユーザーは、「VALU」と呼ばれる模擬株式を発行し、ほかのユーザーに買ってもらえる。上場企業が株式を発行して資金調達できるように、個人が「VALU」と呼ばれる模擬株式を発行して他人に買ってもらい、資金を調達できる。
……と説明されても、ピンと来ない人が多いかもしれない。筆者もそうだった。
ちょっと乱暴だが、分かりやすく例えると、VALUは「あなたのおサイフに、知らない人がお金を入れてくれるサービス」だ。
自分が発行した「VALU」をほかのユーザーに買ってもらえると、その対価があなたのおサイフに入ってくる。購入・売却は日本円ではなくビットコイン建てだが、ビットコインは簡単に日本円に換えられるため、「現金をもらった」と同じ感覚だ。もちろん、もらうだけでは終わらない。それがVALUの画期的なところであり、筆者が「怖い」と思った部分でもある。
筆者がVALUを始めてから、数週間でやめたくて仕方なくなり、やめようと頑張るものの、とても大変だった……そんな2カ月弱について語らせてほしい。長い文章になりそうだ。
VALUを始めるのはとても簡単。VALUの売り出し(「私のおサイフにお金を入れて下さい」と募ること)も簡単。あまりに簡単だった。「新しいSNSに参加する」ぐらいの感覚だ。
まず、VALUに会員登録する。Facebookアカウントを連携させればすぐに登録できる。VALUの売り出しは、サイト上のメニューに従って「審査」に申し込むだけでOK。筆者は6月初めごろに申請し、数日後にあっさり承認された。「申請したのに承認されなかった」という話は聞いたことがなく、審査は甘いようだ。
ユーザーのVALUの「価値」の指標になる最初の「時価総額」(おサイフの大きさ)は、VALU側が一方的に決める。その額はSNSのフォロワー数で上下し、フォロワーが多ければ価値が高く、少なければ価値が低くなる。筆者の場合、Twitterのフォロワーが3万人近くいるので、時価総額はなんと「850万円相当」とのこと。
「これは高いんじゃないか……!? すごいぞ! もうかりそうだぞ!」。当時の筆者は興奮していた。
VALU発行者は、この時価総額を一定の株数(VALU数、単位は「VA」)に「分割」し、切り売りできる。いくつに分けるかも選べるため、筆者は「5000」に分割した。理由は、「分割数候補の中で、一番多かったから」。安易だ。
その結果、1VA当たりの価値は、850万円÷5000=約1700円(0.05641BTC)になった。
ちなみに今筆者は、「時価総額」や「分割」を解説しながらこの記事を書いているが、当時の筆者は全く分かっておらず、「多い」=「すごい」ぐらいにしか思っていなかった。売り出しVALU数も多い方がすごいに違いないと、発行した5000VAを一気に売り出したのだ。大セールだ。
TwitterでVALU売り出しを告知してみた。すると、買ってくれる人が現れた。数週間の間に、3人の方が合計5株(5VA)を買ってくれた。そして筆者のVALU上の“おサイフ”には、約1700円×5=8500円相当のビットコインが入ってきた。
筆者はここでようやくVALUの仕組みに気づき、恐怖を覚え始めた。
「何もしていないのに、見知らぬ人からお金をもらってしまった」
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