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驚異の12分間回転――「ハンドスピナー」開発にアツくなる企業の正体(3/4 ページ)

» 2017年09月06日 07時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 「(開発部門には)むちゃを言って作ってもらった。本業を少し邪魔した」と石井社長は苦笑いする。普段はベアリングのみを製造する同社。しかし試作段階では、ハンドスピナーの本体、車軸、外輪も、社内の汎用工作機械を使い、一から削り出した。「(設計段階で)これくらいなら改良前よりは何倍は早く回ると予想は付くが、実際に確認してみないと分からないことがある」

 大きくデザインを変えること3回。最終的にスピナー中央部に組み込んだベアリングは、外径が9.525ミリ、HDD向けの特殊モデルという。

photo サターンスピナーのパーツ

 ベアリングは、2層の輪の間に「転動体」(ボール)が複数入った構造をしている。このボールが小さいほど、ボール1個あたりの接地面積が小さくなるため摩擦を軽減でき、トルクが軽くなる――という仕組みだが、その分だけ荷重に弱くなる。通常のベアリングは7個程度のボールが入っているが、完成した特殊モデルはよりトルクを軽くするために13個のボールを搭載した。

 遠心力が大きくなるように、スピナー本体の中心部はアルミ素材で軽く、外輪は真ちゅう製で重く仕上げた。内部のベアリングが荷重に耐えられるよう設計したという。

 こうしてようやく完成した「試作 ver.3」は、東京おもちゃショーに出展。そこからさらに2カ月かけ、8月上旬の発売にこぎ着けた。「短い期間で試行錯誤を繰り返したので、デザイン担当者は大変だったと思う」

 同社のハンドスピナーは1個ずつ手作りだ。石井社長は「量産となると、単純に組み立てに時間がかかる」と話す。出荷前には、実際に12分以上回るかをチェック。回転しなければ、細部を確認して組み立て直すという。

photo 1個ずつ手作り

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