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「日本の農業を救え」 楽天が“農業初心者”育成へ

» 2017年09月11日 20時14分 公開
[村田朱梨ITmedia]

 楽天は9月11日、広島県神石高原町と協定を結び、新しく農業を始める人の育成、農業継承を支援すると発表した。消費者から農作物を受注してから育てる「Rakuten Ragri」や、後継者不足に悩むベテラン農家と初心者を引き合わせる「Ragri ブリッジ」などの仕組みを活用する。楽天が地方自治体と組んで農業サービスを提供するのは初めて。

photo Ragriに参加している農家の皆さん

Rakuten Ragriとは?

 Rakuten Ragriは、農家が消費者の注文を受けてから農作物を生産する「契約栽培」のサービス。農作物の購入ではなく「農作業というサービス」そのものに、野菜が届く前から月額料金を支払うのが特徴だ。消費者は産地直送の野菜を入手でき、農家は安定した収入が得られる仕組み。楽天側は、消費者が農家に支払う料金の20〜30%(時期などに応じて変動)を徴収する考え。

photo Ragri CSA

 さらに、神石高原町と連携して「Ragri ブリッジ」と「Ragri リクルート」というサービスも展開。新しく農業を始める“新人”を支援する。

 Ragri ブリッジは、楽天側が引退間近のベテランから土地を借り、ベテラン農家と新人の両方を雇用。新人はベテラン農家のもとで研修生として技術を取得、2年をめどに独立して研修先の土地を引き継ぐ。ベテラン農家が抱える後継者不足、引退後の収入の問題と、新人が参入するための土地や技術がないという問題を同時に解決できるとしている。

photo Ragri ブリッジ

 Ragri リクルートは、農業に新規参入するスタートアップを支援する取り組み。自治体が抱える耕作放棄地などを借り上げ、共用農地として貸し出す。共用の農機具の貸し出しや、行政機関とのやりとり、農作物の加工・出荷のサポートも行う。

photo Ragri リクルート

 Ragriを運営する楽天子会社、テレファームの遠藤忍社長は「この取り組みは、インキュベーションオフィスをまねしたもの(インキュベーションファーム)。経済的に余裕がない初心者でも、転職感覚で農業に参入できるようにする」と話す。

 Ragri ブリッジとRagri リクルートのビジネスモデルは、今後検討するという。

「日本の農業を救え」

 近年、少子高齢化の影響もあり、日本の農家不足が加速。楽天によれば、1960年には1454万人いた農業従事者は、2015年には210万人にまで減少。さらに26年には約56万人になる見通しという。

photo 農家は年々減っている

 では、なぜ農業従事者が増えないのか。楽天の安藤公二執行役員は「農業ビジネスが不安定だから」と指摘する。収穫量が天候、病害虫に左右されたり、相場が安定しなかったり、販路が限られていたり――と課題が多い上に「農業には高い技術が求められ、新規就労者にはハードルが高い」(安藤執行役員)。

 こうした課題の解決には、Ragriが市町村単位で自治体と連携するのが欠かせないという。神石高原町とは、取り組みに対する考え方が合致したことから連携に至ったとしている。同町の入江嘉則町長は「楽天との協力で農業に新たなイノベーションを起こせれば」と意気込む。

 今後も両社は、農家の育成支援を第一に連携を深める考え。ECサイト「楽天市場」で生産物を販売したり、農作業にドローンを活用したりなども検討する。

 「“日本の農業を救え”が合言葉。先駆けとして神石高原町の力を借り、全国で同じような取り組みを広げていきたい」(テレファームの遠藤社長)

 「実際にきちんと収入が得られるとなれば、農業をやりたいと思う人は増える。既存の販路では難しかったことも、われわれの技術によって打破し、若者が挑戦したいと思える農業を作っていく」(安藤執行役員)

photo 左から順に楽天の安藤執行役員、入江嘉則町長、テレファームの遠藤社長

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