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「ナマコ」のむにむにざらざらを再現した触覚VR アダルト参入も「慎重に検討」東京ゲームショウ2017

» 2017年09月21日 17時47分 公開
[井上輝一ITmedia]

 VRで「ナマコ」に触れる。東京ゲームショウ2017(千葉・幕張メッセ、9月21日〜24日)に、東北学院大学とケイズデザインラボがそんな体験デバイスを展示している。

「ナマコ」を触れるVR

専門分野で使われる高性能触覚デバイスとVRをコラボ

 ブースでは、VRゴーグルを装着し、小型のロボットアームが持っている木の棒を指で握って動かすことでナマコとのふれあいが体験できる。触れ合える時間は約3分間で、その間にナマコの硬さが変わる、ざらざらがなくなってつるつるになるなど触覚の変化を楽しむことができる。記者も試してみたが、指に伝わるざらざら感と弾力は、予想以上に“本物”だった。

 開発を主導する東北学院大学の佐瀬一弥助教は、同大学に赴任した4月からこのプロジェクトに取り組んでいる。

 「“見る”方のVRは成熟してきたが、見たものに触れないということに課題を感じていた。私自身、5年ほど前から今回使用している触覚デバイスを用いて研究しており、ゲームやエンターテインメントでVRに応用できる可能性を探っていた」(佐瀬さん)

 触覚VRのために使用しているデバイスは新規に作成したものではなく、3D SYSTEMSの「Geomagic Touch」という既存の製品。スカルプティング(粘土をこねるように3Dモデルを作成する)や手術の練習に用いられるという。

触覚VRに用いている3D SYSTEMSの「Geomagic Touch」

 専門的な領域で使われてきた高性能な触覚デバイスを、エンターテインメントに適用することで新しい体験ができるはずだ──。この思いをまず形にしたのが、ナマコの触覚VRだ。

ナマコは水族館のふれあいコーナーから着想

 なぜナマコに着目したのか。最初の取り組みは、注目される面白いものにしたかった。そこで佐瀬さんが思い付いたのが、水族館のふれあいコーナーだった。

 水族館のふれあいコーナーは、「見るだけ」の通常の展示と違い、ナマコやヒトデなどを手で感じることができる。「見るだけ」のVRが持つ課題の解決を、水族館に見いだした。

 そこで、水族館のふれあいコーナーの中でも、特に形がシンプルで柔らかく、触るのが楽しいだろうとナマコを選んだという。

 

「アダルト」も含めてあらゆる方向性を検討

 ナマコの3Dモデル制作に携わった、ケイズデザインラボのクリエイティブ・ディレクターである加藤健太郎さんは、「視覚のVR、触覚のVRではそれぞれ足りないものがあるが、それらを合わせることで補えるものがあるのではないか」と“視覚”ד触覚”の可能性を語る。

 「リアルな3Dモデルを制作するというときに、例えばハリウッドのモデリングチームが本気を出したらどこよりも精巧なものが出来上がるだろう。モデリング技術のみで“リアルさ”を追いかけるのではなく、そこに触覚を加えることで“実在性”を醸し出したい」(加藤さん)

 「おっぱいを触れるVRがあったらいいのに──」ネット上では、ナマコの触覚VRを体験したユーザーからこんな要望が出ていた。

 2016年にはアダルトVRの体験型イベント「アダルトVRフェスタ01」が想定以上に長蛇の列を形成して警察に解散させられるなど、アダルト系のVRコンテンツは注目を集めやすい。

 加藤さんはアダルトVRフェスタの件も把握しており、「アダルトも含めて、あらゆる方向性を模索している」と、アダルト方面の展開も決して否定する立場ではない。

 一方で「慎重に」という言葉も付け加える。「おっぱいを触るようなVRも方向としてはあるかもしれないが、ただ“触って面白いね”では作っても先がなく、いずれ飽きられるだろう。かといって現状の触覚デバイスでは自宅で“実用”するほどにはならないだろう」(加藤さん)

 一発屋で終わる気はない。“ナマコ”をきっかけに、市場に触覚VRを広げていくためのあらゆる方向性を模索していくという。

ナマコ触覚VRの概要

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