午後4時、いよいよレースが始まった。ドライバーは1人あたり40〜50分連続で走り続け、最高速度は時速140キロに達する――そんな集中力が求められる戦いだ。ITmedia×MONOistチームは徐々に順位を上げ、2人目、3人目……と順調にバトンタッチしていく。
3人目のドライバーは、ITmedia NEWSで「クルマの未来はIoT」を連載中の山口記者。スタート前は「練習不足だから」と弱気だったが、安定した走行を見せ、悠々と第4走者にバトンを託した。
午後7時19分、いよいよラスト走者の5人目がハンドルを握る。他のチームを見回してみると、これまでガソリン消費をセーブしていた分を使ってファステストラップを更新し続けるチームがいる一方、ガソリンタンクの底が見えたのか、急激にタイムを落とすチームも現れ始めた。
「これはチャンス」――そう思っていた矢先、ITmedia×MONOistチームのハンドルを握る5人目から緊迫した声が聞こえてきた。燃料が残り少ないことを示す「Empty」の警告が点灯したというのだ。レース終了の午後8時までは残り20分。ガソリン残量はあと約15周分の予測。ここまでの平均ラップタイムは1分20秒ほど。計算よりも消費ペースが早く、「午後8時になった瞬間、ガス欠になるかもしれない……」そんなギリギリの状況だと判明した。
オペからドライバーに「平均燃費を6.0で保ってください!」「燃費走行に徹してください!」「なるべく惰性走行で!」と指示が飛ぶ。残り10分。ドライバーからは「目の前のクルマが(ガス欠で)止まった」という報告も。「うちのチームは大丈夫」「順位を落としてもいいから完走だけでも……」。ピットに詰める運営メンバーが息をのむ。
残り5分、3分、1分……。「ここで終わりたくない」。本部の緊張がピークに達したその時、大会運営側の時計が午後8時を指した。「4時間を耐え抜いた」と、誰もがそう確信した瞬間だった。
しかし、レース終了を示すチェッカーフラッグは振られない。実は1位のクルマがゴールラインを越えるまでレースは続く。ITmedia×MONOistのクルマは、ちょうどトップにいるチームの数秒前を走っていた。そのため、1位がゴールするより前にラインを越えており、もう1周走らなければならなかった。
明暗を分けたのはこの1周だった。「ガス欠症状が出た」。ドライバーの報告にピットで悲鳴が上がる。間もなくクルマは失速し、コース半ばで力尽きた。ガソリンがあとわずか数百ccほど足りなかった。
ITmedia×MONOistの最終成績は周回数が172周。完走扱いではあるが、順位は付かなかった。「筑波サーキットに忘れ物をしてしまったね」──悔しさが言葉ににじむドライバーとオペのメンバーたちだったが、ゴール直前の興奮に酔いしれたのか、皆どこか笑顔だった。
ITmedia NEWS編集部がYouTubeでお届けするライブ番組「ITmedia NEWS TV」で、この記事を取り上げています。ぜひ視聴・チャンネル登録をお願いします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR