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DMMが買収した「CASH」、競合は「メルカリ」なのか

» 2017年11月21日 11時56分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 DMM.comが11月21日、スマートフォンアプリ「CASH」を提供するベンチャー企業・バンクを70億円で買収したと発表した。CASHは、手持ちの品をスマホで撮影し、商品情報を入力すると商品の査定を受けられ、査定額相当の現金をすぐに受け取れるサービスだ。6月末に提供をスタートし、1日で約3億6600万円が“現金化”され、ネット上でも話題を呼んだ

photo 手持ちの品をすぐに現金化する「CASH」

 CASHは、現金化と引き換えにユーザーから集荷した商品を、中古品市場で再販する「二次流通」で利益を得るビジネスモデルだ。そうすると「競合はフリマアプリ『メルカリ』ではないか」――買収発表の5日前、都内で開かれたイベント「TechCrunch Tokyo 2017」で、登壇したバンクの光本勇介CEOに対しそんな質問が出た。

 「(CASHで商品を現金化するよりも)メルカリの方が高く売れるのでは、と思ってしまう」と光本CEOは苦笑いするが、それでもCASHには需要があるという。2カ月間で見えた手応え、ユーザーの姿は。

ユーザーはメルカリと「使い分けている」

 CASHは6月28日に提供を始めたが、翌29日にサービスを中止。16時間半で約3億6600万円の利用があり、処理能力を上回るほど「想像をはるかに超える反響で、止めざるを得なかった」(光本CEO)。従業員6人の同社オフィスには、ヤマト運輸のトラック1台分の荷物がユーザーから届いたという。だが同時に「この領域は需要があると確信」。体制を整えて8月28日に再開した。

photo 16時間半で約3億6600万円の利用があり、バンクのオフィスにはトラック1台分の荷物が届いた

 きっかけは「世の中にないサービスを作りたかった」。特に光本CEOが興味を持ったのが「少額資金ニーズ」だった。「1万〜3万円を今すぐに欲しい」という潜在的なニーズがある一方、既存のサービスは時間や手間がかかると感じていたという。「スピーディーに要望に応えられる、ハードルが低いサービスを作りたかった」

 「ただ、資金を提供するには何かしらの取引が必要」と光本CEO。その手段として「誰でも周りにモノはある」という発想から、瞬間的に現金化するサービスが生まれたという。

photo バンクの光本勇介CEO

 CASHは、そうして集めた商品を中古品市場で「二次流通」させ利益を得る仕組みという。ただ、中古品の取引で成長を続けているサービスには、フリマアプリ「メルカリ」がある。光本CEOは「(意図したわけではないが)結果的にメルカリが競合になったのではないか、というコメントをいただくことがある」と話す。

 「(CASHよりも)メルカリの方が高く売れるのでは、と思ってしまう」(光本CEO)。だが、CASHはメルカリよりも簡単に即現金化できるため、ユーザーが使い分けていると光本CEOはみる。「(CASHの場合は)汚い写真でも買い取る。フリマアプリだときれいに撮らないと売れない。気楽に売りたいというニーズに合っていると思う」

 光本CEOは「二次流通の市場は成熟していない」とも。二次流通の業界課題は「買い取りたいほど買い取りたい企業がいること」という。「買い取りさえすれば売り先はあって、市場の可能性がある。CASHは物をかき集めるアプリなのでビジネスになる」

「毎日が社会実験」

 サービス再開から約3カ月、光本CEOは「毎日、社会実験をしている感覚」と話す。オープン時、中止までの約16時間しか運営できなかった結果と、現在の24時間運営している結果を比較すると、得られるユーザーの特性など、結果は全く違うという。「蓄積すればするほど資産になる。処理しきれていないが、ノウハウを溜めたい」

 一方「常に危機感はある」。CASHは、ユーザーの現金化に対応できる資金力さえあれば、競合がまねできる可能性もある。「まだブランドや認知、事業の拡大はできていない。運用すればするほどノウハウがたまり、高く買い取るなどユーザーに還元できる部分も出てくると思う」という。「ただ、ものすごく複雑な技術を使っているわけではない。プロモーション、ブランディング、UI・UXの改善と全てを試していくことになるのでは」

 光本CEOは「バンクは、その名の通り『銀行』の意味。お金を扱うことがテーマの会社になると思う」と展望を語る。「サービス名(CASH)と社名(バンク)が違うのは、他にもサービスを出す可能性があったから。興味がある市場、ユーザーは1つのプロダクトでは抱えきれないテーマだと思う。構想はたくさんあるので、どういうタイミングで出していくか、考えたい」

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