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量子計算の正しさを事後チェックする新手法、JSTと京大が開発

» 2018年01月23日 10時56分 公開
[ITmedia]

 科学技術振興機構(JST)と京都大学は1月22日、量子計算の結果の正しさを効率的に事後チェックできる方法を開発したと発表した。計算本体と計算チェックのプロセスを、世界で初めて分離。量子コンピュータの信頼度が高い場合はチェックを省き、低い場合は計算結果を受け取った後に事後チェックする仕組みで効率化した。

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 量子コンピュータはノイズに弱く、実行した計算は、正しさをチェックする必要がある。これまで提案されていた方法では、計算本体と計算チェックのプロセスが分離不可能な形で組み合わさり、常に同時に実行される仕組み。量子コンピュータの信頼度の高低に関わらず一様に同じチェックをすることになり、非効率だった。

 今回の研究では、量子計算本体と計算チェックのプロセスを分離できる理論プロトコルを提案。量子コンピュータの信頼度の高さに応じて、計算の正しさを事後チェックできるようにした。

 ユーザーが量子コンピュータを信頼している場合は計算チェックプロセスを行わず、信頼性が低い場合は、量子計算の結果を受け取った後に、計算の正しさの証明を量子コンピュータに要求すれば、計算結果が正しいものであるという証明がエンコードされた量子ビットを受け取れる。

 ユーザーは、送られてきた各量子ビットを測定用のデバイスで測定し、その測定結果を通常のコンピュータで処理。測定結果がある条件を満たしている場合は非常に高い確率で、計算結果が正しいことが理論的に保証されるという。

 新手法では量子コンピューターから量子ビットが1つずつ順に送られるため、ユーザーはその量子ビットを1つずつ順番に測定していけばよく、測定用デバイスに量子メモリを必要としない。

 この手法を使えば通常のコンピュータでも効率的なチェックが可能になると期待。今後、クラウド量子計算が普及した際にも、計算結果の信頼性を、事後(計算結果を受け取った数週間後など)でも、簡単にチェック可能になるとみている。

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