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3年間の保有でライブドアに売却益400億円をもたらした「弥生会計」の秀逸なビジネスモデル「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2018年01月23日 11時33分 公開
[NOKIZALITmedia]

 会計処理ソフトウェアなどを提供する弥生(東京都千代田区)が1月22日、官報に掲載した2017年9月期(16年10月〜17年9月)決算公告によれば、売上高は169億7400万円(前年同期は161億3800万円)、経常利益は46億8100万円(同43億9400万円)だった。累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は34億9100万円(同16億1700万円)。

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 弥生は1978年創業。看板商品である「弥生」シリーズは87年から販売しており、中小企業や個人事業主向けに「弥生会計」「弥生給与」「弥生販売」といった業務ソフトウェアを提供している。ブランド名の弥生は日本では3月決算の企業が多く、会計ソフトが活躍する時期が3月(弥生)であることから名付けられたといわれている。

photo 「弥生」シリーズを販売している(弥生の公式サイトより)

 現企業の前身は、97年に米会計ソフト大手のIntuitが、日本マイコン(78年設立)やミルキーウェイ(80年設立)を統合・設立したインテュイットで、03年に平松庚三氏がMBOをして独立、現在の弥生となった。

 その後、04年にライブドアが弥生を230億円で買収したが、07年には投資ファンドに710億円で売却。14年に現在の親会社であるオリックスが800億円で買収した

ここがポイント

 今回の決算も増収増益と堅調な業績を見せる弥生。17年9月時点でのユーザー登録数は160万、会計ソフト販売シェアは66%で、圧倒的な業界トップに君臨しながらの増収増益は見事ですね。長年の会計ソフトでの圧倒的なシェアに加え、その3分の1に当たる約50万が継続率90%近い有償会員となっており、ストック収入につながるというビジネスモデルの秀逸さが光ります。

 04年のライブドア買収時の事業規模は、ユーザー登録数40万、有償会員9万だったようです。前述の通り、頻繁に経営環境が変化する中、そこから十数年の間に4〜5倍に拡大しているのも、戦略にブレが生じそうなのに地味にすごいことだと思います。ライブドアなどは3年間の保有で約400億円もの売却利益を上げているわけで、あらためて堀江貴文氏のビジネスセンスも感じつつ、親会社からすれば「なんて孝行息子か」という感じでしょうか。

 そして、近年のFintechブームに対しても、会計ソフト大手として守り一辺倒に徹することなく、弥生のクラウド対応やクラウド請求管理「Misoca」の買収、直近では親会社オリックスと共同設立した貸金業子会社アルトアを通じてオンライン融資にも参入――と積極的な動きを見せています。

 17年は「弥生」シリーズ誕生30周年を迎え、会計ソフト周りからさらに踏み込んだ「業務3.0」を実現できる“中小企業の事業コンシェルジュ”を目指すビジョンを打ち出した弥生。勢いに乗るFintech系ベンチャーにとっても、もともとの足腰が強く、環境変化にも柔軟対応する“ウサギ”の背中を追うのは、やはりそう簡単なことではなさそうです。

弥生の過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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