シンガポールに登記上の本社を置く半導体大手Broadcomは3月14日(米太平洋時間)、同業の米Qualcommへの買収提案を取り下げると発表した。「この決断は非常に残念だが、大統領令に従う」としている。
ドナルド・トランプ米大統領は12日、この取引を禁じる大統領令に署名した。この命令では、買収だけでなく、Qualcommの株主総会に取締役候補を送り込む計画についても禁じており、Broadcomはこれにも従う。
だが、昨年11月に発表した本社の米国内への移転計画については継続する。この計画の発表は、Qualcomm買収を発表する直前に行われた。米連邦政府はこの買収について、大統領令発令以前から国家安全保障上の懸念があるとしていたが、Broadcomは本社の米国移転を完了してからQualcommの買収を計画するため、問題はないはずだとしていた。
Broadcomの前身は、旧Hewlett-Packard(HP)の半導体部門が独立して誕生したシンガポールのAvago Technologiesだ。Avago Technologiesは2015年に370億ドルで旧Broadcomを買収し、その社名を受け継いだ。旧Broadcomはカリフォルニア州南部を拠点にチップを製造していた。
米Bloombergは、BroadcomはQualcommの買収は断念しても、本社を米国内に置くことで今後他社の買収がしやすくなるだろうというアナリストの見解を紹介した。
Broadcomは昨年11月にQualcommに対し、約1300億ドルでの買収を提案した。Qualcommは2度にわたって提案を拒否し、Broadcomは敵対的買収のためにQualcommの株主総会に取締役候補を送り込む計画だった。
この買収が成立すれば、Broadcomは米Intel、韓国Samsung Electronicsに次ぐ世界第3位の半導体メーカーになるはずだった。
QualcommはBroadcomによる買収は免れたが、米Appleとの法廷闘争や難航しているオランダの半導体大手NXP Semiconductorsの買収などの問題を抱えている。
Qualcommの株主総会は3月23日に開催される見込み。
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