もっと分かりやすく言えば、例えばレストランやグッズのレビューサイトで、一般投稿者を装ったサクラがお金をもらって絶賛レビューをすることに近いと考えていいと思います。消費者白書(2017年)において「商品やサービスを検討するときに口コミを参考にする」と答えた人の割合は、20代女性は82.7%とされています。その口コミがステマに汚染されていた場合、その影響は計り知れません。
私のメールボックスにも個人的に「これをあなたのサイトで紹介してくれないか」という依頼が来るのですが、そこには「事前に記事をチェックさせてください」「報酬は……」という文言が書かれていることもあり、完全に無視するようにしています。そしてその商品を推している他のブログやInstagram投稿を見て、それが「ステマ」だと気が付くわけです。しかし、普通に見ている人にはその区別は付きようがありません。これは大きな問題でしょう。
それだけではありません。ステマが本当に問題なのは、「筆者が熱量を持って何かをお勧めする」という行為を萎縮させることにつながりかねない点です。かつてブログブームが起きたときには、十人十色の「好き」があふれていて、とても面白い時代だったと思います。しかし今では、熱量のある記事を見ると、冷やかすように「ステマ?」というような反応を見ることが増えました。自分ですらも、べた褒め記事を見ると一瞬構えて見るようになってしまっています。これは本当に悲しいことです。
ステマが作り出した小さな染みは、多くの人に少しずつ「不信感」となって心に引っ掛かり続けるのです。そんな世界における最も愚かな行為とは「まじめにやること」かもしれません。そんな未来は、子どもたちに見せたくないというのが、私の正直な感想です。
インターネットの世界は「信頼」でできていると思っています。自分が得たものと同じだけ、インターネットの世界に還元しようと考える人たちで作られた善意の世界が、今では現実世界と同様、性善説だけでは回らなくなっています。
コンテンツなんて他人が作ったものをコピペすればいい、偽の評価を作り出せば現実世界で金になる──そう考えることは仕方がないかもしれません。しかし、それはこれまで先住者たちが積み上げてきた「信頼」を削る行為であり、いつかその信頼はゼロになってしまうでしょう。それだけは避けたいのです。
特にステマは、読者側が判断することはほぼ不可能でしょう。まずは「ステルスマーケティングという手法が存在する」ということを知っておくだけでもいいと思います。2015年7月にはYahoo!ニュースがステマ撲滅を掲げました。まずはステマとは何かを知り、あなたがいつも見ているニュースサイトや雑誌が「編集コンテンツ」「広告コンテンツ」の区別をしっかり付けているのか、チェックしてみてもいいかもしれません。
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