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「“ログボの必然性”考えて」――「Fate/Grand Order」塩川洋介氏が抱く、クリエイター教育の課題(1/3 ページ)

» 2018年04月05日 06時00分 公開
[井上輝一ITmedia]
スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」の企画・開発・運営をするディライトワークスの受付

 「もし実装を依頼するなら、作ってもらう人には『なぜログインボーナス(ログボ)が必要か』を言えないといけない」――スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」(以下FGO)をはじめとしたFGO PROJECTクリエイティブプロデューサーである塩川洋介さんは、これからクリエイターになる学生たちにこんなことを学んでほしいという。塩川さんは2018年度から大阪成蹊大学の客員教授となる。なぜ、現場でゲーム制作に携わりながら教壇にも立つことになったのか。塩川さんが抱く“クリエイター教育の課題”について聞いた。

大成功の「FGO」 なぜクリエイター教育も意識?

FGO PROJECTクリエイティブプロデューサーの塩川洋介さん

 塩川さんは現在ディライトワークス(東京都目黒区)で、FGOを筆頭とした関連作品を制作する「FGO PROJECTクリエイティブプロデューサー」を担っている。開発陣の代表者として同ゲームのイベントステージなどに出演することも多い。

 FGOはTYPE-MOONのノベルゲーム「Fate」シリーズに連なる作品で、15年7月からスマホ向けに配信を開始。FGOの販売元がソニー・ミュージックエンタテインメントの子会社アニプレックスであることから、17年第2・第3四半期のソニーの決算では音楽分野の好調要因としてFGOが名指しされるほど、影響力を持ったコンテンツに成長している。

 ゲームの企画・開発・運営を担当するディライトワークスも、17年11月の第4期決算公告で当期純利益を45億9000万円とするなど着実に成長している。このようにクリエイターとして成功している塩川さんが、なぜ教壇に立とうという意識を持つのか。それには、塩川さんがかつて味わった「日米のゲーム制作文化の違い」に対する危機感が深く関わっているという。

スクエニ時代に痛感した米国の「共通化」文化

 塩川さんは2000年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。最初に配属されたチームでは「キングダムハーツ」の開発初期から関わった。09年からはスクウェア・エニックスの北米支部に出向することになる。

 塩川さんは「当時は『プレイステーション 3』や『Xbox 360』の全盛期で、海外から何千万本も売れるようなビッグタイトルがたくさん出始めていた頃でした。一方で日本はスマホ向けソーシャルゲームがヒットし出す前でしたから、『日本のゲーム業界大丈夫なの?』という空気がある時代でした」と振り返る。

 日本と米国では何が違うのか――決定的に違うのは「共通化」だったという。

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