家電見本市「IFA」を主催するベルリンメッセが年に一度開催している「Global Press Conference」(GPC)がイタリアのローマで始まった。世界でもっとも歴史が長く、規模の大きな家電展示会のIFAが主催するこのイベントには、世界60カ国から約320人の報道関係者が集まり、市場調査会社のGfkやIHS、ドイツの家電通信機器協会(gfu)が提供する市場データをもとに、市場アナリストや記者、メーカーも交えながらの情報交換が行われる。
ベルリンメッセ主催だけに、9月開催のIFAに向けた「予告編」という見方もあるが、Gfkによるデータをもとにした議論は、テクノロジー製品のトレンドを読み解く上で、極めて興味深い情報を含むことがある。何が伸びて何が衰退しているのか。価格トレンドと出荷台数ベースでのトレンド、その両方についてグローバルでの動きを見ることができるからだ。
中でも筆者が注目しているのは、gfuのチェアマンを務めるハンス=ヨアヒム・カンプ氏の分析だ。Gfkによる市場調査や予測値が、比較的前向きで楽観的な印象を受けるのに対し、実際の欧州で家電ビジネスを行っている業界団体からの声は、家電業界の現在と今年のトレンドに対するリアルな声でもあるからだ。
そんなgfuの分析によると、堅実に成長を続ける白モノ家電だけでなく、デジタル家電を中心とした黒モノ家電も、一時の停滞期を抜けて一定の成長軌道がみられるという。ただし、その目線の先に日本市場はない。20年前なら北米、欧州、日本が「三大市場」だったが、現在は北米、欧州、中国が三大市場となり、これらの合計が68%を占めているからだ。
また成長市場を見た場合でも、南アメリカの+9%(2017年に対する18年予測値)や、中国、日本、韓国などを除く新興アジア市場の+7%、それに欧州の+7%に比べると弱い。日本や韓国を中心とした成熟アジア市場は+4%という予測だが、日本市場だけに限ればほとんど横ばいとみられている。
その理由は明快。上記は金額をもとにした予測値(ただし米ドルベースであるため為替の影響での変動もある)だが、現在の黒モノ家電市場はスマートフォン、テレビ、PCの合計が約75%を占めており、残りの25%が“それ以外”。
日本ではテレビ市場の売上持ち直している点と、企業向けはWindows 10への置き換え需要などからやや伸びるとみられるものの、コンシューマー向けPCがマイナス成長と予想されているのは同じだ。しかし、グローバルではスマートフォン市場の成長が予想されていることに加え、25%を占める“その他”市場における成長株であるスマートスピーカー、あるいはスマートスピーカーに関連したAI音声サービスと連動するスマートホーム製品が、日本市場で受け入れられていないためだ。
グローバルでの黒モノ家電市場(デジタル家電市場といってもいいかもしれない)と、日本市場はその“カタチ”が乖離(かいり)していることが指摘され、それが他国市場における日本メーカーの影響力や競争力に影を落とす結果を招いてきた。日本は低成長とはいえ、やはり一国の市場としては大きく、日本の家電メーカーは日本市場中心のモノ作りを行う。その市場環境がグローバル市場と乖離すれば、長期的な影響は避けられない。
だが、テレビに関しては心配は無用のようだ。
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