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日本メーカー、欧州のテレビ市場で再び存在感を示せるかIFA GPC(3/3 ページ)

» 2018年04月26日 12時40分 公開
[本田雅一ITmedia]
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ファーウェイ飛躍の理由はスマホならではの写真補正

 一方、スマートフォンはカメラ機能の進化、画面の大型化、フィーチャーフォンに比べて短い買い替えサイクルなどがプラス要因とされている。とりわけHuawei(ファーウェイ)の伸びは、カメラ機能の進歩がもたらしたものといえるだろう。

 今回のイベントにはファーウェイも参加し、「P20/P20 Pro」のカメラ機能にフォーカスしたプレゼンを行っていた。P20 Proでは光学3倍ズーム(映像処理で最大5倍)が搭載されている上、低照度での撮影やシャッター速度4秒までの手持ち撮影に耐える(とアピールしている)光学/電子を組み合わせた手ブレ補正機能などが搭載されているが、何より驚くのはその画質だ。

 P20 Proはパリで行われたグローバルの発表会で、参加者全員に配布されたこともあり、さまざまなサンプル写真がSNS上にあふれかえったが、スマートフォンとは思えない品質の写真も多い。AI技術を応用した画像処理を行うことで、後処理でRAW現像とレタッチをしたような写真に自動的に補正されるからだ。

 写真は「真を写す」と書くが、あえて撮影者が「望んだ姿」に積極的に補正することで、素材としての写真ではなく、最初から好ましい仕上がりの画像を出力するのは、即時SNSなどで共有することが多いスマートフォンならではのニーズともいえる。

 時をほぼ同じくして、コンパクトデジタルカメラ市場からカシオが撤退するとのニュースが駆け巡ったが、小型カメラへのニーズはスマートフォンにほぼ集中していると断言していいだろう。それも、あるがままに写すのではなく、撮影者が望むだろう補正があらかじめ施された、見栄えのいい写真だ。

 言い換えれば、「撮って出し」で見栄えのいい写真を得るニーズと、目の前のシーンをそのまま可能な限り忠実に捉えるというカメラ本来のニーズ。この2つに別れているということだろう。ならば、“撮って出し”を極めるために、スマートフォンという商品形態を借りて、徹底的に“幻想的に美しい”、つまり写実的な映像にこだわらないことでコンパクトデジタルカメラに予算を充てていた消費者をひきつけることが可能だ。

 あらためて言及するまでもないかもしれないが、カメラ機能を中心としたスマートフォン市場の成長には、とりわけセルフィーカメラ(インカメラ)の画質向上なども含め、まだまだ可能性がある。

 ただし、こうしたカメラ機能を中心にした平均単価の上昇や買い替えによる市場活性化の主役は、(特に中国、アジア、欧州における)Androidスマートフォンだ。言うまでもないことだが、iOSが動作する端末はApple以外にはなく、カメラ機能の進化はAppleに任せきりになるからだ。

 このため、iPhoneの販売比率が他地域に比べて極めて高い日本市場では、gfuやGfkが出している予測よりも低成長となる可能性はあろう。AppleのiPhone XやiPhone 8シリーズのカメラ画質もいいのだが、Androidスマートフォン……とりわけ中国系メーカーの端末は、より見栄えのいい写真へと大幅に変換する傾向が強い。この点、Appleがどこまでカメラ機能に力を入れていくるかに依存する(グローバルで見た場合、韓国などを含めた成熟アジア市場は5%しかないため、日本市場の特殊性が与える影響は少ない)。

スマートホームでは出遅れ気味の日本

 さて、前述したスマートホーム市場だが、Gfkによると「スマートホームというジャンルに期待を寄せている」とする消費者……つまり、スマートスピーカーやそれらと連動する音声操作機能を持つ製品に期待する人の割合は、グローバルで50%いるという。中国の75%という数字が効いているのだが、日本以外の国は多少の差はあるものの、おおよそ50%前後に収まっている。

 ところが日本での期待度はわずか19%しかない。

スマートホーム分野の国別成長期待度。日本は世界平均よりもかなり低い
スマートスピーカーに代表されるボイスコントロール製品の出荷実績と18年の予測値。急成長が見込まれている

 その理由を尋ねてみたが、明確な理由は分析できていないようだ。しかし、実際に日本で暮らしているわれわれの肌感覚からいっても、スマートホーム製品、特に中心となるべきスマートスピーカーが他の市場ほど勢いがあるようには感じられない。

 それが言語的な問題なのか、文化の問題なのか。理由は分からないが、今の状況では日本でこのトレンドを拾っていけるメーカーは出てきにくいだろう。グローバル市場の乖離が進むと、イノベーションの波に乗り遅れていく可能性はありそうだ。

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