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Google I/O 2018基調講演まとめ AIのある快適な暮らし

» 2018年05月09日 06時13分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米Googleは5月8日(現地時間)、本社キャンパス近くの野外ホールShoreline Amphitheatreで年次開発者会議「Google I/O 2018」の基調講演を開催した。発表されたことを時系列にまとめる。

 恒例のオープニングアニメ動画は、人(半透明の4色キューブ)が影響し合うことで世界をよくしていけることを表すもので最後に「一緒に良いものを作ろう」というメッセージが表示された。続いて登場したスンダー・ピチャイCEOは昨年のバーガー絵文字問題から話を始め、「テクノロジーの生活への影響は大きいのでわれわれには責任がある」と語った。

 io 1 スンダー・ピチャイCEO

 「Googleはより有用な情報にアクセスしやすくすることを目指しており、AI(人工知能)のおかげでそれが以前より可能になった。昨年紹介したGoogle AIをもっと世界に広げていく」(ピチャイ氏)

Gboardのモールスモード

 AIのアクセシビリティでの活用例として、キーボードアプリ「Gboard」のモールス信号での入力機能を紹介した。これは障害のために口頭での会話も入力もできない開発者、タニア・フィンレイスン氏が夫と共に開発した独自のモールス信号入力システムを元に、GoogleのGboardチームが協力して開発した。短点と長点の2つのキーボードのあるモールスモードは、英語版のAndroid版Gboardのβ機能として公開されている。

 io 2 Gboardのモールスモード

Gmailの新機能

 次に紹介されたのは最近大幅なアップデートがあったGmail。5月中に追加する予定の新機能として、「Smart Compose」が披露された。ユーザーの入力をAIが予測して、文章の続きをグレイの文字で表示する、スマートリプライの作文版のような機能だ。候補が望み通りであればタブキーを押すことで完成させる。ユーザーのメールでの入力履歴を学習しているので、特に定型になりがちなビジネスメールで役立つとピチャイ氏。

 io 3 GmailのSmart Compose機能

Googleフォトの新機能

 GoogleフォトのAI機能としては、写真を表示するとユーザーが見たいとAIが予測する関連する写真をサジェストする機能、机上の書類の写真を撮影するとそれをPDFに変換する機能、写真の目的対象にだけ色をつけたり、モノクロ写真をカラーにする機能などを紹介。いずれも数カ月後に使えるようになる見込み。

 io 4 Googleフォトの加工例

TPU 3.0

 紹介したAI関連機能は、すべてTensorFlowで実現した。機械学習に最適化したプロセッサ「TPU(Tensor Processing Unit)」は第3世代「TPU 3.0」になり、性能は先代の8倍になったとしている。「あまりにもパワフルになったのでデータセンターに初めて液体冷却システムを導入しなければならなくなった」とピチャイ氏が語った。

Googleアシスタントにジョン・レジェンドの声が

 AI音声アシスタントの「Googleアシスタント」については、声が従来よりさらに自然になったと紹介。新たに男女3人ずつの6種類の声が追加された。中にはアーティストのジョン・レジェンドの声データで構築したモデルのものもある。DeepMindが開発したディープラーニングツール「WaveNet」により、少ない入力データで自然な声を作れるという。

 io 5 声を入力するジョン・レジェンド

 このほか、いちいち「Hey Google」と呼びかけずに会話を進められる「Continued Conversation」、連続した複数の質問を分けて理解してそれぞれに答える「Multiple Actions」、子供がていねいな質問をするとほめる「Pretty Please」などを紹介した。

スマートディスプレイのデモ

 1月のCESで紹介された米Amazonの「Echo Show」のようなスマートディスプレイのデモも行われた。JBL、Lenovo、LG Electronicsの製品は7月以降に発売の予定だ。Lenovoの製品でYouTube動画を再生したり、料理のレシピを表示したりするデモを行った。ビデオ会話にも対応するとしている。

Android端末のGoogleアシスタント

 AndroidのGoogleアシスタントの新機能として、StarbucksやDomino'sなどが参加する「Food pick-up & delivery」のデモも行われた。例えばGoogleアシスタントにコーヒーを注文するとメニューが表示され、好みのものをタップすると最寄りの店舗候補が表示され、選ぶとその店舗でコーヒーをピックアップできるよう準備する。

 また、現在は音声だけで答える「My Day」が画面にも表示されるようになる。この機能は今夏に追加される見込みだ。

ユーザーの代わりに電話予約をしてくれるGoogleアシスタント

 まだ開発段階の機能として、予約代行機能のデモも行われた。ユーザーがGoogleアシスタントに「火曜日の朝10時から12時の間に髪を切る予約をして」と頼むと、「はい、予約できたらお知らせします」と答え、連絡先にある美容院に電話して予約する。相手の反応に臨機応変に対応し、「少しお待ちください」と言われて「hummm」と答えたり、ユーザーに頼まれたこと以外の質問があっても自然な受け答えで対応する。

 披露されたのは美容院とレストランの予約だったが、ピチャイ氏は、忙しい朝に子供の病院の予約をするときに便利だと語った。

デジタルとうまく付き合うための新機能

 次にピチャイ氏は、FOMO(Fear of Missing Out=見逃すことの恐怖)に対して近年見直されてきたJOMO(Joy of Missing Out=見逃すことの喜び)を支援するいくつかの新機能を紹介した。次期Android OS「Android P」で1日の利用時間、メール数、通知数などを一覧するDashboard、YouTubeを長時間見ていると「少し休んだら?」と表示する機能、子供の利用時間をコントロールする「Family Link」などだ。

Googleアシスタントの新機能については別記事にまとめた。

新生「Google News」

 「Google News」を刷新する。デザインがGoogle Material Themeになり、表示するニュースのパーソナライズや1つのテーマの総合的な情報まとめなどの機能がつく。

 io 6 Google News

Android P

 AndroidもAIをコアとして、インテリジェンス、シンプルさ、健全さの3つの視点で新機能を紹介した。

 io 7 Android P

 デザインでは、ホームボータン周りがかなり変わり、片手での操作がしやすくなりそうだ。

 io 8 ホーム画面のデザイン

 Android Pのβは同日公開。Pixel以外でも以下のメーカーのAndroid端末が対応する。

 io 9 Android Pのβをインストールできる端末メーカー

詳細記事

Google Mapsの新機能

 関連情報を紹介する「For You」タブの新機能や1クリックで店に予約できる機能などのほか、ナビ画面で端末のカメラを使って実際の進行方向を示す機能や、レストランなどの店舗情報が表示されるAR(拡張現実)機能も紹介された。AR機能についてはリリース予定は不明だが、その他の機能は向こう数カ月中に利用できるようになる見込みだ。

 io 10 方向音痴に朗報

Google Lensの新機能

 日本語ではまだ使えない「Google Lens」の新機能として、画像からテキスト部分をコピーしてテキストとしてペーストする「Smart text selection」、Pinterestのような、映したものに似たものを紹介する「Style match」、例えばポスターを映すと関連するプロモーション動画の再生を始める「Real-time results」機能が紹介された。これらは2週間後に現在Google Lensが使えている地域と機種で利用可能になる。

Waymoの進捗報告

 Alphabet傘下の自動運転企業Waymoのジョン・クラフシックCEOが登壇し、アリゾナでの自動運転車無料貸し出しについて語った。

 また、幹部のドミトリ・ドルゴフ氏は、実際の公道での累計走行距離は600万マイルだが、TensorFlowを使ったシミュレーションで50億マイル走行したと説明。15倍正確になったという。

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