Googleさんの年次開発者会議「Google I/O 2018」の基調講演で一番印象に残ったのはユーザーの代わりに電話予約をしてくれるAIのデモでした。「Duplex」というAI技術を使っています。
ピチャイさんによると、これらのデモは実際のお店を相手にしたリアルな予約を録音したものだそうです。紹介された美容院への予約の会話を下に訳してみました。へたくそなのであまり自然な感じになっていないかもしれませんが、声の感じで、お店側の人が話している相手が人間じゃないことにまったく気づいていないのが分かりました。
美容院の人 はい、おうかがいします。
アシスタント こんにちは。クライアントの女性のヘアカットの予約で電話しています。5月3日がいいのですが。
美 ありがとうございます。少しお待ちください。
ア はーい。
美 何時ごろがよろしいですか?
ア 午後12時。
美 12時には予約が入っています。一番近くで空いているのは1時15分ですが。
ア 10時から12時の間に空きはありませんか?
美 どんなコースをご希望かによります。お客様は何をご希望ですか?
ア 今のところ、女性向けのヘアカットだけです。
美 では、10時にお受けできます。
ア 10時でいいです。
美 ありがとうございます。お客様のお名前を教えてください。
ア リサです。
美 ありがとうございます。では、5月3日午前10時にリサ様のご予約をうけたまわりました。
ア よかった。ありがとう。
美 はい。よい1日を。失礼します。
基調講演からこの部分を抜粋してくれた動画を貼っておきます。
スンダー・ピチャイCEOによると、Googleは自然な会話のできるAIシステム「Duplex」の開発に長年取り組んでおり、これには同社の自然言語理解、ディープラーニング、音声変換などの技術が使われているそうです。
Duplexを一番実社会で役立たせられるのは何かと考えたGoogleは、お店への予約電話を思いつきました。オンライン予約が普及してきているとはいえ、米国でも小さなレストランなどでは今でも電話でしか予約を受けていません。
Duplexが使えるようになれば、ユーザーはGoogle HomeやスマートフォンのGoogleアシスタントに「5月3日の10時から12時の間にヘアカットの予約をしておいて」と言えば、アシスタントが電話してくれます。
予約しようと思った日にお店が休みでも、人気店でなかなか電話がつながらなくても、Duplexが何度でも電話をかけてくれます。電話すること自体が苦手な人(私もそうなんですが)にとって、すごく助かります。海外旅行先で現地言語で代行してくれたら、さらにありがたい。耳が聞こえないなどの障害がある人にとっても便利なツールになりそうです。
お店側にもメリットがあります。アシスタントは予約がとれたらユーザーにプッシュ通知し、Googleカレンダーにも予定を入れておいてくれるので、予約したのに忘れてしまったり、時間を間違えたりする人が減りそうです。
また、横柄な態度や聞き取りにくい声で人間が電話してくるよりも、アシスタントの方が感じがいいし、はきはきしていて対応しやすそうです。
でも、デモがあまりにも見事だったこともあり、さっそく「倫理に反する!」とか「悪用されたらどうするんだ!」という声が。
Googleは公式ブログで、自然な会話の訓練はすごく複雑で難しいので、今のところ実用化できそうなのは電話予約だけだと言っているし、「お店側が電話のコンテキスト(AIが人間の代行でかけてきているということ)をちゃんと理解できるようにするつもり」だと説明しているんですが。
倫理に反する、というのは、人間に対してAIが人間のふりをするのは失礼だということのようです。これについてはGoogleがブログでも、批判された後にもコメントしているように、電話の最初に「私はロボットです」のように宣言すれば解決すると思います。
相手がロボットだと分かっていても、「ワ・タ・シ・ハ・ロ・ボ・ッ・ト・デ・ス」みたいな話し方ではなく、自然な話し方をしてもらった方がお店側もやりやすいと思うんですが。それでも、「ガスが危険だと分かるように臭いをつけるように、AIの声もそれと分かるようにしておくべきだ」という主張がありました。
悪用については、とりあえず押し売り電話や「オレオレ詐欺」くらいしか思いつきませんが、手軽に使えるようになるのはまだ先でしょうから、それまでにGoogleさんも対策を考えるんじゃないでしょうか。
何かすごいものを見ると恐怖を感じるのが人間というものなので、今回の批判も無理はありません。Googleさんはそういう声も参考にしつつ、どんどん便利なAI開発に突き進んでくれればいいと思います。
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