当時まだ大学在学中だった彼は、卒業プロジェクトとしてEnvisionの開発に着手。共同創業者のカナンさんとともに、AIとGoogle翻訳を搭載したプラットフォームを完成させた。そして卒業間近の17年2月に創業、翌年2月にアプリのリリースにこぎつけた。
母国インドから発想を得たEnvisionのサービスには、マハーデーヴァンさんの母国への強い思いも込められている。それはインドの地方のように、スマホを持ってはいるが、サブスクリプション料金を継続して支払えない貧困層の視覚障害者に向けた「寄付」機能だ。
Envisionのサイトでは、貧困層の視覚障害者への援助として、同サービスのサブスクリプションをスポンサーする制度が紹介されている。1カ月、6カ月、1年のサブスクリプションプランから選び、数とメールアドレスを入力、クレジットカードやデビットカードで支払いをすれば完了する。
この寄付機能では、寄付した相手や彼らがEnvisionを使ってどう変わったか、寄付後の情報が提供されるという。
このところ、Envisionのような視覚障害者向けサービスの開発が目立っている。
米Microsoftが3月にリリースした類似サービス「Soundscape」では、街を歩いているときにアプリを起動すると、あらかじめ店舗などに設置されたビーコンから店舗情報をキャッチし、「右手にスーパーマーケットがあります」「バス停は◯メートル先です」などとイヤフォンを通じて知らせてくれる。ちょうど、健常者が周りを見渡しながら歩いているように、視覚障害者は音声で情報を得られることになる。
また、すでに多くの視覚障害者が利用している、カメラで撮影した文章を読み上げてくれるアプリ「KNFB Reader」や、現時点ではまだテスト段階でリリースに至っていないが、Envisionと同じくオランダ発のスマホカメラで写したものを説明してくれるアプリ「Eyesense」など、視覚障害者の生活を助けるサービスは徐々に増えてきている。
背景には、スマホの普及、AIとカメラ技術による画像認識技術の目覚ましい発達があるだろう。また、人種や宗教、LGBTなどダイバーシティーへの理解が高まってきたことから、障害者やマイノリティーの権利、個々の自由などがより一層注目されてきたことも考えられる。
Envisionを開発者をはじめ、アントレプレナーたちの活躍、そして「障害者×スマホアプリ」分野の今後の盛り上がりに期待したい。
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