――素体(ベースモデル)のパラメータはどの程度いじれるんですか?
清水 素体は現状、女性のみです。男性モデルはなるべく早いタイミングで提供できるようにしたい。胸の大きさ、手足の長さ、太さといった一般的な体型編集のパラメータは提供できます。できれば低年齢的なところから成人的なところまでパラメータで編集できるようにしたいです。
――カートゥーンライクなものだけでなく、リアルに寄ったモデルはできます?
清水 けっこう等身は高くてリアル寄りです。ただ、鼻の造形とかは日本のキャラクターチックになっているので、そこからリアルな、鼻の穴があるような造形にはならないです。
しげぽん するとしたら、別の素体として提供することになるでしょうね。現状はこれをベースにユーザーさんが思い描いている顔のシルエットや体のバランスを調整することになります。今はこの素体の中でクォリティを詰めているので。今回はVRMというドワンゴさんが提供しているフォーマットですが、そこから別の形式にエクスポートすることもできるし、Unityでゲームにも使えるし。Blenderに読み込んで調整してもらうということもできます。
MMD(MikuMikuDance)で他のモデルを流用してトラブルになったり、規約で利用目的が制限されているものがあったりする中で、ユーザーは自由に使えるモデルはないのかと悩んでいるわけですね。
――MMDが出て3D作品はたくさん出てきたけど、モデルの扱いは自由というわけではなかった。
しげぽん VRoidで作ればユーザー自身が権利者になって、VRMに権利の記述もできるようになります。
――VRMが登場する前はどんなフォーマットで考えていたんですか? FBXとか?
清水 MMDのPMDファイルとか、FBXとかですね。
しげぽん FBXが業界のスタンダードですが、テクスチャなどいろんなファイルが散逸してしまいがちで、フォーマットを理解するだけで大変です。VRMはワンパッケージで簡単にインポートしてVTuberになれたりVRゲームで利用できたりするので、そのおかげで提供しやすくなりました。VRoidで発表した後にVRMに対応しようという流れができたのもうれしいです。
清水 3Dのゲームを作るにはアセットを用意するのが大変なんですが、VRoidがその役に立てばうれしい。
しげぽん VTuberの発注とか僕のところにも来てたんですけど、受けるにしても時間がかかるしお金も要求しないといけない。受けたいけど受けられない人も多い。お金以上に人的リソースが足りないんです。
清水 頼めたとしても2カ月後、3カ月後とか。
しげぽん スケジュールは埋まってるんですね。VRoidを使って自分自身で作れてしまうという自然な流れを出せたというのはよかったと思います。
――髪型とかめちゃくちゃ期間を短縮できますよね。MakeHumanとか髪型がろくなのなくて。
しげぽん そうなんです。髪の毛や顔はキャラの命。目のデザイン、顔の形、髪型はその人も象徴するものなんですね。例えば僕が小さい頃、母親の髪型が変わったときにとても戸惑った記憶があるんですが(笑)。
清水 僕らがこのキャラメイクのデモでキャラクターの髪型と色を持ってきたのはそこなんです。髪の色も、1本違う毛色が入っていただけで違うものになる。イラストレーターのこだわりを反映させるためにまず取り組んだのがそこですね。
――一番気を使ったのはどこですか?
清水 プロシージャルなデザイン機能もあって、複数の毛束を一度にデザインできる機能とか。
しげぽん プロシージャルに生成した後に太さを変えたりランダマイズしたりというのはモデリング界でも熱くなっている部分で、決まった髪型から選ぶのではなくて、気に入った髪型をパラメータから作れる、自分自身がヘアデザイナーになったような気分を味わえると思います。
――VRoid Studioを動かすためのマシンパワーはどの程度必要ですか? ディスクリートGPUは必要だったりします?
しげぽん 僕の9年前のノートPCでも動きました(笑) 要求スペック自体はそこまで高くならないと。
――絵描きさんが普通に使っているマシンで普通に動くと。
しげぽん そうですね。とりあえず無料なので体験してもらって、それで足りないなと思ったら購入を検討してもらうとか。
――ペンタブレットへの対応は?
しげぽん Wintab APIというのを使っているのでWindowsは対応したワコムなどのタブレット。Macはネイティブで対応しているのでその他のタブレットでも動作します。
――VRMのサンプルになるようなVRアプリを出したりはしないんですか? 例えばOculus Goで自分のキャラクターが動くのを覗いたり会話したりできるとか。
清水 あー、いいですね(笑) 全然ありえますよね。今後AR、VRが普及するにつれて、絶対に3Dモデルが問題になってきます。僕らはそこに向けて提供していければ。
しげぽん レディー・プレイヤー1の世界を。
清水 一人一アバターどころか一人数アバターで、コミュニティによって使い分けてもらったりしてもいいですし。
3Dのキャラクターメーカーを作ったきっかけは、数年前、ユーザーさんに「もしもあなたが魔法を使えたらどんなことをしたいですか?」と聞いたとき「自分が描いたキャラクターが3Dになって動き出したりフィギュアになったりしたらうれしい」という声が多かったこと。絵描きさんは3D化やフィギュア化したいという夢があるんだなと。
――自分のキャラクターとのファーストコンタクトは重要ですね。
清水 キャラを生み出したということを感じてもらいたい。そこに対する演出としては撮影機能をつけようと思っています。ポーズとかをつけてpixivに投稿したり。その時点でキャラは動き始めているので、魂が入って動き始めているところは感じられるようにしたいです。
――魂が入っている感じ!
しげぽん 自分が作ったキャラがリアルな人に挨拶するとか、それだけでもうれしい。
清水 3Dのキャラクターを動かすところまで、今までなら3カ月はかかってしまいます。それをVRoidなら一瞬でいける。
――恋しちゃいますよね。ピュグマリオンがガラテアに対して抱いたみたいに。
ドワンゴと協力した美少女ゲームメーカー2社もVRM対応のキャラクターメーカーを投入する。この夏、VRroid Studioによってどんなキャラクターが命を吹き込まれるだろうか。
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