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「AIが犯罪を予測する世界」が危険なワケ(5/5 ページ)

» 2018年08月21日 08時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]
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 ところで、最近は政府・与党が2020年の東京五輪・パラリンピックの酷暑対策として、夏の時間を2時間繰り上げる「サマータイム」を導入する検討に入ったとして、話題になりました。サマータイムなんて気合と根性で解決する類の話ではなく、何年にもわたる綿密で入念な準備が必要です。それがどうして五輪の暑さ対策として、いきなり俎上に載せるのでしょう。

 システムに無理解な権力者が余りに多すぎないでしょうか。どうして官僚の誰も「とても無理です」と返答できないのか、不思議でなりません。

AI 画像はイメージ

 人工知能を研究する東京大学の松尾豊特任准教授は、外資就活ドットコムのインタビュー(外部リンク)で、AIをめぐる研究開発を太平洋戦争に見立てていました。前線で戦う部隊のために軍需品や食料などを供給する兵站(へいたん)を構築できなかった上層部(恐らく省庁やら大企業の偉い人)を断罪しています。

 確かに似た話です。見たことが無いから感覚でしか判断できないという「視野の狭さ」と、きっと何とかなると思っている「見通しの甘さ」。何度、同じ過ちを繰り返せばいいのでしょうか。

 今のままでは「犯罪の予測と予防」という人権に関わる重要な問題ですらも、AIなんて何一つ分からない人たちが「データがあればAIがきっと何とかしてくれる」と考えて、導入を進めていきかねません。

 私は「正しいことをしたければ偉くなれ」というせりふが好きです。それぞれがそれぞれの立場で、本当に正しいことをするためには、日本という大企業の中で偉くなるしかないのでしょうが、それまでに日本は大企業でいられるのかが最近の疑問です。

著者プロフィール:松本健太郎

株式会社デコム R&D部門マネージャー。 セイバーメトリクスなどのスポーツ分析は評判が高く、NHKに出演した経験もある。他にも政治、経済、文化などさまざまなデータをデジタル化し、分析・予測することを得意とする。 本業はインサイトを発見するためのデータアナリティクス手法を開発すること。

著者連絡先はこちら→kentaro.matsumoto@decom.org


編集部より:著者単行本発売のお知らせ

人工知能に仕事を“奪われる”、人工知能が“暴走する”、人工知能に自我が“芽生える”――そんなよくありがちな議論を切り口に、人工知能の現状を解説してきた連載「真説・人工知能に関する12の誤解」が、このたび、書籍「AIは人間の仕事を奪うのか? 〜人工知能を理解する7つの問題」として、C&R研究所から発売されました。

連載を再編集し、働き方、ビジネス、政府の役割、法律、倫理、教育、社会という7つの観点から、人工知能を取り巻く問題を理解できる構成に仕上げています。この本を読めば、人工知能の“今”が大体分かる――連載を読んでいた方も、読んでいなかった方も手に取っていただければ幸いです。本書の詳細はこちらから。

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