小売り店舗にAI(人工知能)を搭載したカメラを設置し、来店者の不審行動を検知して万引きを防止するサービス「AIガードマン」を、NTT東日本とベンチャー企業のアースアイズ(東京都中央区)が6月下旬から提供する。先行導入した店舗では、導入前と比べると万引き被害額が約4割減ったという。
店内のカメラが来店者の不審行動を自律的に検知し、NTT東日本のクラウド経由で、店員のスマートフォンに位置や静止画などの情報を通知する。通知を受けた店員が不審者に「何かお探しですか?」などと声掛けし、万引きを防ぐ。
声掛けという手法をとることで、単に購入したい商品を探している人だったとしても、店員が早く気付けるため、購買につながりやすいという。声掛けした店員は、スマホアプリ上で「声掛け完了」ボタンを押し、記録しておく。
アースアイズが開発したカメラは、来店者の頭や骨格の動きを捉え、万引きが疑われる行動かを判断している。不審な行動は、店舗の形態ごとに異なる。例えば、スーパーマーケットでは、店内を回遊しながらきょろきょろと死角を探す、書店では、棚の前に立ち止まって周囲を確認する――といったように、特徴的な動作をチェックする。
カメラの視野角は144度、検知距離は最大13メートル。一般的なコンビニ店舗では、天井の高さが十分であれば、3台程度で店内全体をカバーできるという。映像はクラウド上に保存される。
「導入の効果を可視化したい」という声にも応え、カメラの検知数、店員が声掛けした割合などを定期的にレポートするサービスも用意する。不審行動のデータは、ユーザーが利用するクラウドとは別に、アースアイズのクラウド上でも収集。データを学習し、新しい手口や顧客層の変化にも対応する。
初期費用は、AIカメラが1台当たり23万8000円(税別/以下同)。設置・設定費用が別途掛かる。クラウド利用料は、カメラ1台ごとに月額4000円。映像を保存するストレージは月額500円(10GB)から。
提供開始に先立ち、家電量販店のビックカメラ、スポーツショップのゼビオ、ドラッグストアのココカラファイン、キリン堂が試験導入した。都内のあるドラッグストア店舗(売り場面積が300平方メートル、年間約4億円売り上げ)では、導入前は年間約350万円の万引き被害が出ていたが、導入後は年間約200万円に減ったという。
NTT東日本の石川達さん(ビジネス開発本部第4部門長)は「どの小売り店舗でも万引きに手を焼いていて、経営課題になっている」と指摘する。同社の調べでは、万引き被害額は推計で年間4000億円以上。財務面で店舗経営を圧迫する上、万引き防止のために人員を配置する必要があるなど、業務負担が増える一因になるという。
アースアイズはそうした課題に着目し、これまでもAI技術を活用した万引き防止システムを提供してきたが、全国の店舗に導入を広げるには、販売から施工、保守までをワンストップで提供できるパートナー企業が必要だった。NTT東日本がそれらの役割を受け持ち、今後3年間で1万店舗への導入を見込む。
アースアイズの山内三郎代表取締役は「(監視カメラの用途が)映像の記録だけというのはもったいない。これからは『あなたの店舗のカメラは万引きを発見できないの?』といえる時代が来る」と自信を見せた。
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