CEDEC 2018
スマホゲームは「やりたくなかった」のに「スーパーマリオラン」が生まれた理由 任天堂・宮本茂氏
任天堂の宮本茂氏(代表取締役フェロー)が8月22日、10年ぶりにゲーム開発者向けイベント「CEDEC」に登壇した。宮本氏は「10年間で最も大きな変化はスマートフォンの登場。ゲームも生活も随分と変わった」と振り返り、「1人でも多くの人にゲームを遊んでもらうことを考えると、さすがにスマホを無視できない状況になってきた」と話す。任天堂は2016年12月にマリオシリーズ初のスマホアプリ「スーパーマリオラン」を公開。3億人近くがダウンロードしているという。
「覚悟を決めてやることにした」スマホアプリ
任天堂は、自社でゲーム機とゲームソフトの両方を提供しているメーカーだ。他社のハード向け商品を作ったことはなかったという。宮本氏は「クリエイターの仕事も増えるので、やりたくないなと思っていたが、覚悟を決めた」と話す。
スーパーマリオランの方向性を決めたのは、昨年10月に発売したNintendo Switch向けソフト「スーパーマリオオデッセイ」だったという。「“走り回れるマリオ”という原点に戻ろうということで、マリオオデッセイを作ることになった。そこから、もしモバイル版を作るなら、もっと単純に“走って飛ぶだけのマリオ”を作れないかと考え、方向性が固まった」(宮本氏)
スーパーマリオランは、自動で動くマリオをタップ操作し、コインを集めながらゴールを目指すゲームだ。宮本氏は、初めてマリオシリーズを遊ぶ人でも気軽にできるよう「シンプルで簡単なゲームにしよう」と考えてはいたが、長年ゲームを作ってきたからこそ“チャレンジの血”が騒いで「ここはもう少し難しくしたら面白い」と手を加えた部分もあったという。
しかし、ユーザーのほとんどが序盤の「ステージ3」で遊ぶのを止めてしまったという。その後、誰でも楽しく遊べるよう、短い10種類のステージをテンポよく遊べる「リミックス10」というモードを追加した。「プレイヤーを見ながら新しいものを作るのは、モバイルの開発の面白さだと思った」(宮本氏)
避けられない「課金」の問題
宮本氏は「できるだけパッケージに近い形でマリオを売ってみたいと思った」と話す。スーパーマリオランはスマホゲームにありがちな「課金モデル」ではなく、1200円払うとフル機能で遊べる「買い切り型モデル」にすることにした。「マリオは真剣に攻略するというより、適当に遊んで失敗して、次は本気で取り組むというラフな遊び。ゲーム回数に応じて、料金を取るのはマリオと相性がよくない」(宮本氏)
宮本氏は「お金を出していただくのは、サービスや開発したデータに対して。(課金は)パラメーターを上げたり、レアなアイテムを入手しやすくするためにはしない」という方針を決めた。スーパーマリオランを買い切り型モデルにしたのも、「スマホゲームという巨大な市場でたくさんの人に少額でも課金してもらえれば利益が出る」「少しでもゲームを遊んでもらって、少しでいいからお金を払うという習慣を付けてもらいたい」と考えたからと話す。買い切り型モデルとしてうまくいったかは分からないが、採算は取れているという。「今後も、少額でも課金してもらえる仕組みにチャレンジしていきたい」
プラットフォーマーとアプリの関係
さらに宮本氏は、スマホの普及に伴って「プラットフォーマーとアプリ制作者の関係が変わってきている」とし、その中で「アプリに対してお金を払うという構造を崩さないようにしたい」と話した。
最近は、通信キャリアが契約者を増やすためにアプリをそろえたり、サブスクリプションサービスの利用を促すためにアプリを増やしたり――と、ハードウェア(プラットフォーム)が主、ソフトウェア(アプリ)が従というケースが増えているが、宮本氏は「(開発者は)その会社がソフトの価値を大事にしているかを見極めなければならない」と話す。
宮本氏は、任天堂の社長を務めた故・山内溥氏の「お客さんはハードなんて買いたくない」という言葉が真理だといい、かつて「ハードにソフトを5本付けて売りたい」という話があったとき「ソフトを3本買うとハードをプレゼントするならまだいいが、それはダメだ」と反対したことを明かした。「“ソフトにお金を払う”という習慣を付けてくれるところと一緒に仕事をしたい」(宮本氏)
講演の終盤、宮本氏は「ゲームというメディアは漫画や映画などに追い付いているのかどうか、ずっと考えている」と話し、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の漫画作りに苦悩するヒロインについて触れた。
「僕は漫画家を諦めてゲームデザイナーになったが、(「半分、青い。」を見て)『ゲームを作るとき、眠れなくなるほど自分を追い込んでいるか?』と思った。漫画に勝つためにも、あれくらい自分を追い込んでアイデアを出せる人が一人でもいたら、世界に一矢報いることができると思う」(宮本氏)
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