ITmedia NEWS > STUDIO >
ニュース
» 2018年08月23日 18時03分 公開

CEDEC 2018:「Fateらしさとは、奈須きのこである」 「Fate/Grand Order」開発秘話、ディライトワークス庄司社長が明かす

[村田朱梨,ITmedia]

 スマートフォンゲーム「Fate/Grand Order」(以下、FGO)の開発元であるディライトワークスの庄司顕仁社長が8月23日、ゲーム開発者向けイベント「CEDEC 2018」に登壇し、開発当初のエピソードを披露した。100万字超ともいわれる重厚なストーリーが特徴で、累計1300万ダウンロードを突破したFGOだが、当初はシナリオ要素がほとんどないスマホゲームとして企画されていたという。

photo

 FGOは、主人公が歴史上の偉人や神話の登場人物などを「英霊」(サーヴァント)として従え、人類滅亡を防ぐため時空を越えて旅をする――というストーリー。ゲームブランド「TYPE-MOON」が展開する「Fate」シリーズに連なる作品だ。同シリーズのシナリオなどを手掛ける奈須きのこ氏が総監修、全体構成を担当している。

 しかし2013年10月、庄司社長がTYPE-MOONから持ち掛けられた当初の企画案は、現在のFGOとは全く異なり、「シナリオ要素はほとんどなかった」(庄司社長)。当時、TYPE-MOONでは、多忙な奈須氏に負担を掛けないように「(スマホゲームは)シナリオをあまり入れないで作ろう」と考えていたのだという。

photo 2013年当時の企画書

 企画案は、当時のソーシャルゲームのトレンドを押さえたもので、庄司社長は(Fateという)人気IPを活用したゲームなので“それなりの数字”が出るだろう」と、TYPE-MOON側に意見を伝えた。しかしそんな高評価に対し、TYPE-MOON側の反応は「いまいち」だったという。

 なぜ、そんな反応なのかは分からなかったが、庄司社長はFateについて詳しくなかったので、あらためて企画の話をするために、Fateシリーズを“勉強する”時間をもらったという。

 「Fateについて勉強するうちに、強烈な違和感を覚えた。Fateというコンテンツはとてもパワーがあるのに、それまでの作品の販売実績が平均10〜20万本というのは少ないと感じた。もっと売れていいはずなのに」(庄司社長)

 しかしTYPE-MOON側は、10〜20万本という数字に違和感を持っていなかったという。「TYPE-MOONの認識では『Fateは超ニッチ』『狭い層に深く刺さる』『コアファンはおそらく10万人くらい』だった」(庄司社長)からだ。

photo TYPE-MOONの自己認識

 そこで、庄司社長は「きっかけさえあれば、『Fate』が“生涯の1本”になる人はもっとたくさんいるのではないか。より多くの人にFateと出会う機会を提供するべきだ」と熱弁した。その結果、スマホゲームプロジェクトは見直され、再設計することになったという。プロジェクトのゴールは「最も新しく、最も手に取りやすく、しかしながら、最もFateらしい、100万人に届く新たなFateを創ること」に決まった。

 しかし、ここでも課題があった。肝心の「Fateらしさ」とは何かという点だ。庄司社長は、TYPE-MOONや、スマホゲーム化を呼び掛けたというアニプレックスと議論したが、Fateらしさがキャラクターなのか世界観なのか、はっきりとは分からなかったという。Fateシリーズの原点「Fate/stay night」のキャラクターをカードにして並べても「Fateらしい」とは感じられなかった。同作とシナリオもキャラクターデザインも異なるシリーズ作品がファンに「Fateらしい」と評価されることもあるからだ。

photo シナリオもキャラクターデザインも違う、どちらも「Fateらしい」ゲーム

 そうして議論を重ねた結果、得られた結論は「Fateらしさとは、(シリーズ原作者の)奈須きのこである」だったという。

 「Fateという作品を分解していった結果、それをつなぎ合わせる鎖は『奈須きのこでしかない』ということを、本人も含めて再確認した。これが決め手になり、今の(シナリオがある)FGOの原型ができた」(庄司社長)

photo 「Fateらしさとは、奈須きのこである」
photo Fateスマホゲームプロジェクトは今のFGOのような形へ

 また、同講演に登壇した塩川洋介執行役員(クリエイティブオフィサー/FGO PROJECTクリエイティブプロデューサー)も、FGOを成長させるために行った工夫の1つとして「ソーシャルゲームにとっての『当たり前』をやめること」を挙げる。具体例として、塩川氏は「開発初期は『ソシャゲならシナリオはこのくらい』と決めていたのを『FGOでは気にしなくていい。何キロバイトでもシナリオを書いてください』ということにした」と明かした。

 ディライトワークスによれば、FGOの累計ダウンロード数は1300万超(18年8月23日時点)。15年のリリース時と比べて、17年時点で平均MAU(月間アクティブユーザー数)は2.3倍、平均売り上げは5.3倍に成長したという。

photo FGOの成長

 「プロデューサーの仕事の本質は、クリエイターの思いや才能をビジネスとして成立させること。そして、クリエイターの生み出す作品を全ての潜在ファンに届けることだと、FGOを生み出すときに学んだ。お客さまを理解し、自分自身を知ることほど大切なことはない」(庄司社長)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.