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遠隔地の体験共有する“分身”ロボットの可能性 旅も仕事も「今すぐここで」 特集・ビジネスを変える5G(3/3 ページ)

» 2018年11月29日 13時00分 公開
[村田朱梨ITmedia]
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 中馬さんによると、最大の課題はVRの没入感が足りないことだ。

 テレイグジスタンスロボットのユーザー体験は、主にVR映像で得られる視覚情報と、装着したデバイスから伝わる触覚情報で構成される。だが、現在の4G環境では高解像度の映像を配信するのが難しく「視界がどこかぼやけてしまう」という。

 「人間は7〜8割の情報を視覚から得ている。いくら『触っている』という感覚を得られても、視覚情報にリアリティーがなければ“本当の没入感”は得られない。旅行体験イベントでも、あと一歩足りないことを実感した」(中馬さん)

 また、ロボットと操作者の動きや感覚のタイムラグも課題の1つだ。Telexistenceの研究では125ミリ秒まで遅延を抑えられているが、人間が違和感なく日常的な動作を行うには、遅延を100ミリ秒未満にする必要があるという。イベントでは、感覚のズレが原因で「VR酔い」になった人もおり、快適な体験のためにも遅延の解消が欠かせないことが分かった。

 こうした課題の解決策になると期待されているのが、次世代のモバイル通信方式「5G」だ。5Gでは、4Gよりも大容量で高速な通信が可能になり、多数の機器とも同時に接続できる。ネットワーク遅延も少ないため、高解像度のVRコンテンツの配信にも期待がかかる。「4Kや8KのVR映像を使えば、3D空間の光景は十分“リアル”に感じられると思う」(中馬さん)

photo 5Gの特徴(KDDI公式サイトより)

 5Gの活用に加え、画像処理を効率化すれば、遅延を100ミリ秒未満に抑えられる可能性があると中馬さんは期待を寄せる。KDDIはそれらの技術をTelexistenceに提供し、改善を進める計画だ。

 5Gは、日本国内で2020年の商用化に向けて研究開発が進んでいる。5Gが普及した時、テレイグジスタンスロボットはどんな存在になるのか。「地上にあるテレイグジスタンスロボットを遠隔操作できるようになれば、次は宇宙でも……と想像は広がっていく。難しいことではあるが、いつか実現したい」(中馬さん)

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