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空想と現実の狭間に 「電脳コイル」で考える近未来の脅威アニメに潜むサイバー攻撃(1/7 ページ)

» 2018年11月30日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

連載:アニメに潜むサイバー攻撃

サイバー攻撃は、時代に合わせ、攻撃の対象や手口が変化してきました。しかし近未来の世界、最新技術へのセキュリティ対策はイメージしにくい部分もあります。そこで、そう遠くない未来、現実化しそうなアニメのワンシーンをヒントに、セキュリティにもアニメにも詳しい内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の文月涼さん(上席サイバーセキュリティ分析官)が対策を解説します。第5回のテーマは「電脳コイル」です。

photo (C)磯 光雄/徳間書店・電脳コイル製作委員会

文月(以下F): 私、こう見えても、アニメに関するアンテナはかなり高い方だと思うんです。

ITmedia NEWS編集K: ……? いえ、見たまんまだと思いますが?

F: ぐぬぬ。それはさておき、見ていないアニメでも名前ぐらいはたいてい知っているつもりでした。しかし、この連載を始めてから、しょっちゅう「『電脳コイル』を取り上げてほしい」といわれて、失礼ながら「そんなのあったっけ?」と思っていたんです。皆がいうぐらいだから見どころがあるはずだし、だとしたらどこかでアンテナに引っ掛かってもいい。特にタイトルから想像するにサイバー関連だし。

K: なるほど。

F: 実際見てみると、派手なドンパチこそありませんが、電脳の話としても普通のストーリーとしても、すごく深みがあるじゃないですか。何で知らなかったんだろうと思いました。

K: で、その心は?

F: 「観測するまで、事象は雲のようにあやふやで、存在は確定しない」という話みたいに、認識して始めてそこに忽然(こつぜん)と現れた、まるでSFのタイムスリップによる歴史修正が目の前で行われたみたいな感覚を得ました。でもこれって、実は僕の子どものころは、よくあった感覚なんですよね……。

K: んんん? Fさんと少し歳が離れているから、いまいちピンときませんね。

F: SF題材のジュブナイル(青少年向け小説)、子どものころの日常を描いた小説や映画……それらとも共通する、なつかしさから来る既視感なんです。

K: 何年前ですか?

F: うるさいわ!

著者紹介:文月涼(ふづき・りょう)

大阪市立大学卒。日産自動車就職後フリーライター・カメラマンに。デジタルカメラに関する記事を執筆するが「あまりに辛辣な記事を書くため、さまざまな事情で引退」(本人談)。その後、内閣官房内閣広報室、内閣サイバーセキュリティセンターに勤務。「国民の皆さまにサイバーセキュリティに関する興味をもってもらうためには『何でもする!』をモットーに連載しているので、登場する本人のキャラクター像は意図的にかなり大変ものすごく脚色されています。あしからずご了承ください」


(編集部注)以下、ストーリーの核心に迫るネタバレを含みます。ご注意ください。


電脳コイルの世界……あやふやで、でも鮮やかな世界

F: 電脳コイルは、202X年、電脳メガネというAR(拡張現実)グラスが普及して11年、おそらく石川県金沢市近郊にある大黒市でのお話です。子どもたちは電脳メガネを好んで付けていて、親から「メガネ遊び」といわれるように、中にはどっぷりはまっている子もいます。電脳メガネは両眼一体型の透明なサングラスのようなものと、通常の眼鏡が必要な人向けに左右に分かれた眼鏡型のものがあり、現実世界にオーバーレイして存在する「電脳世界」が見えるようになります。

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