ITmedia NEWS >

「自動さぶちゃん」の時代は来るか 「5G普及後の未来」を考える(2/2 ページ)

» 2018年12月10日 11時13分 公開
[小寺信良ITmedia]
前のページへ 1|2       

ブロックチェーン技術の活用について

 インターネットを使ったコンテンツ配信サービスは、少数の海外大手プラットフォームによる寡占化が進みつつある。Netflix、Amazon、Apple、Spotify、Googleのうち2社ぐらいと契約すれば、映像も音楽もほとんど十分だろう。

 こうした寡占状態は、消費者にとってのデメリットは、今のところそれほど顕在化していない。1社独占となればマズいが、今のところ2-3社で争っている状況が一番いい。彼らは、消費者を裏切ると痛い目に遭うということをわかっている。

 ただ、今の状態が未来永劫続くわけではない。王者は入れ替わるかもしれないが、王者しかいなくなるときが来る。そうなったときに、対抗できる手段が必要だ。

 そこで我々は、今のような集中配信型の逆、ブロックチェーン技術を使った分散型コンテンツ配信に注目している。Winnyが事件化して萎縮してしまったが、一時期日本は世界で希に見るP2P技術先進国であった。今でも、個人ベースでP2Pノードを立ち上げた経験のある人がそこここにいる国というのは、そうないはずだ。

 日本としては、その資産を活かしてぜひ分散型コンテンツ配信の研究および実用化に注力すべきである。ブロックチェーンであれば、コンテンツに紐付いた権利者情報を書き換えれば、すぐにわかる。また誰がどのような形で配信を行っても、著作権者に正しく報酬が支払われる仕組みも構築可能だ。これは同時に、海賊版対策となり得る可能性もあり、並行してこれらの研究も行うべきである。

 だだしそこには課題がある。現在の著作権法では、利用許諾型でコンテンツを管理している。一方音楽だけは、集中管理機構としてJASRAC等があるため、報酬請求権型で管理が可能になっている。報酬請求権型は、利用するのは原則自由で、そのかわり利用料を支払うことが義務となるわけだ。

 この仕掛けを音楽だけでなく、映像、写真、テキスト、マンガ等にも展開しておく必要がある。この仕掛けが動いて初めて、どこで利用されても、自動的に報酬が著作者に支払われるという仕組みが動くことになる。

ホームネットワークと5G技術の関連性の整理

 5G普及後の未来図においては、家庭内のIoT機器が5Gと直結するイメージが描かれることも多い。例えばスマートロックや冷蔵庫でもなんでもいいが、IoT機能が付いていて5Gに繋がるとなった場合、家電1個1個に対して5Gをキャリアと契約するといったことは非現実的である。Wi-Fiでいったんまとめて、ルータが家庭内引き込み線の代わりに5Gに繋がる、といった図式が現実的だろう。

 仮にそうなった場合、MVNO事業者も含めて、家庭内ルータの設置合戦になりかねない。思い出されるのが、Yahoo! BBがかつて行っていた、街頭無料ルータばらまき営業だ。どの時点で契約なのか、また解約条件等が不明確であったため、全国で新聞沙汰のトラブルとなった。また利用代金の回収に債権回収会社を利用していたため、架空請求と区別が付かないといった事態となった。

 また昨今のSIM契約においては、特定のサービス利用のみ通信料をカウントしないといった商品が増えている。ルータも同様の営業は可能になるはずだ。加えて、別サービスと組み合わせた回線契約もあり得るだろう。例えば大手プラットフォーマーの利用に回線契約が付帯しているようなケースだ。

 こうした特殊な契約の場合、接続機器が均等に扱われるのか、という問題がある。例えば仮に、AppleやGoogleが5G回線契約に参入したとしよう。この回線は、Apple製品以外、あるいはGoogle製品以外のものも等しく通信速度が担保されるのか、といった問題がありうる。

 こうした差別的な扱い、あるいは通信の傾斜配分がおこなれるようなことは、不当に競争原理を侵害しないか、といったところも見ていく必要がある。またモバイル契約では珍しくない2年4年の回線縛りが、家庭向け回線に適用されるということもあり得るだろう。

 1人の人間に対する個人契約であれば、別の方法でカバーし得るが、家庭向け回線が契約変更もままならなくなってしまったら、問題が大きい。こうしたタイプの消費者囲い込みが拡大しないよう、慎重なガイドライン策定が望まれる。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.