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月額15万円の“介護ロボ”はコスパ良し? 専門家の見解は

» 2018年12月11日 13時48分 公開
[村上万純ITmedia]

 米Aeolus Roboticsが、介護士の周辺業務をサポートするAI(人工知能)搭載の「アイオロス・ロボット」を2019年から日本でも展開する。頭部に搭載したカメラを通してモノやヒトを認識し、ロボットアームで洗濯物や新聞を運んだり、ごみを回収したりする。

 レンタル料金は月額15万円(税別)。人手不足に悩む日本の介護業界だが、果たして月額15万円の介護ロボのコストパフォーマンスは良いのか悪いのか。12月11日に都内で開催された報道関係者向け発表会で、高齢者住宅経営連絡協議会の森川悦明会長は「長時間働き、AIによる学習でパフォーマンスが成長することを考えると、介護士のパートナーとなり得るならその価格で十分だろう」と語った。

AI 介護士の周辺業務をサポートするAI(人工知能)搭載の「アイオロス・ロボット」。米Aeolus Roboticsのアレキサンダー・フアンCEO(左)、高齢者住宅経営連絡協議会の森川悦明会長(右)
AI モノの固さを認識し、力を調整してつかむという
AI 下部に赤外線センサーや超音波センサーなどを搭載し、障害物を避けて移動する

「月額15万円の介護ロボ」はコスパ良し?

 高齢者住宅経営連絡協議会は、高齢者住宅の運営や入居者の暮らしについて考える団体。森川会長は「超高齢化社会に直面する日本では、ロボット介護機器の開発は国も重点分野として力を入れている。これまでは、人間の代わりに動くようなロボットはなかなか出てこなかった」と話す。

AI
AI 介護の周辺業務をサポート

 高齢者の移動を介助するパワーアシストスーツや歩行補助車などと異なり、アイオロス・ロボットは“人間のように動く”ことを意識して開発されている。周囲の環境や物体を認識する「AIビジョンセンサ」と、関節が7つある左右のロボットアーム、移動用の車輪などで構成され、モノをつかんだり運んだりできるのが特徴。生活用品や食事、洗濯物、ごみの回収・運搬などの周辺業務をサポートすることで、介護士が入居者の介護に専念できるようにする狙いだ。

 アイオロス・ロボットは機械学習を使った画像認識技術を使い、エレベーターに乗って目的のフロアに向かったり、用途によって自分の手を付け替え、人間のように掃除機を使ったりできる。バキューム型のアタッチメントを用意せず、あえて人間のように掃除機を使って掃除するのは「人間のように動く執事のような存在にしたかった」という開発者のこだわりだ。

AI モノを認識
AI ヒトを認識。スマートフォンのカメラで人物やモノを登録する

 森川会長は「人間は1日8時間働くが、ロボットなら昼間の業務を夜間でもこなせる。業務自体はゆっくり行うと思うが、休まず長時間働けるようになれば人と比べても悪くない」と太鼓判を押す。Aeolus Roboticsによると、「従来と比べ、月額の人件費を4分の1から6分の1まで抑えられる」。現状の連続稼働時間は4時間だが、レンタル契約者の要望に合わせて稼働時間は柔軟に変えられるとしている。

AI 人手不足を解消
AI ロボットが支援する業務

 また、人間ではなくロボットが介護業務をサポートするメリットは他にもあるという。

 「介護職員が増えれば介護の質が上がるのかは疑問。それよりも、ロボットと業務を分担することで、介護士一人一人の専門性を高めることが重要だろう。入居者やその家族も、ロボットの介護に安全と安心を期待しており、ポジティブな反応を見せている」(森川会長)

 森川会長によると、介護士や施設運営者からも、業務の負担軽減や施設の収益改善などに期待する声が上がっているが、新しい取り組みや投資にネガティブな反応を見せる関係者もいるようだ。

 森川会長は「ロボットには、介護だけでなく高齢者の自立を支援するような役割も期待したい」と話す。今後は音声会話など人間とコミュニケーションができるような機能も追加される予定だ。

 日本では2019年4月にレンタル予約を開始し、8月に出荷する予定。

AI 介護業界がロボットに期待すること

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