ネット証券を使ってみたいと思ったことが投資のきっかけだったように、株式と向き合う目的も、もうけることよりも、それを通じて社会や経済を学ぶことにあった。
「ビジネスパーソンで株をやっていなければしょうがないと思いますよ。株式がどういう仕組みで社会に貢献しているかを知らなければいけない。ある種、人間社会が凝縮したものです。エンジニアの私ですらそう思うわけですから」
そんなスタンスなので、資産運用で稼ぐことはオススメしていない。株式売買でもうけるのではなく、あくまで本業でもうけるべきだと話す。
「超過収益は仕事で、投資はベータ、インデックスで。ニュートラルなポジションはそこじゃないか。特に20代、30代は仕事で超過収益を狙わなければ」
金融理論では、市場全体の値動き(インデックス)によって生み出される利益をベータと呼ぶ。一方で、ベンチマークとなる指標を超える超過利益のことをアルファと呼んでいる。インデックスファンドはベータからの収益を目指すものだが、アクティブファンドの場合は市場平均を超える収益、つまりアルファを目指している。多くの投資の専門家がしのぎを削ってアルファを探し求めているが、定義上、誰かがアルファを得たらほかの誰かがインデックスを下回るという厳しい世界だ。ナイトウォーカーさんは、ビジネスパーソンが超過収益を狙うのは本業であるべきだと言う。
では、どのような資産運用がオススメなのだろうか?
「ラップ口座を買うくらいならつみたてNISAを買いましょう。米国IT株式ならS&P500のインデックスを買ったほうがいい。インデックスファンドは骨とう品屋の隅のほうに置いてあるもの。買いたいと思って初めて出してもらえるんです」
証券会社や銀行は、当然ながら自分たちが利益を出せる商品を勧めてくる。最近増えているのが、証券会社などに包括的に資産運用を任せる「ラップ口座」だ。プロが株と債券の比率などを調整したポートフォリオを組み、資産配分を調整するリバランスもやってくれる。安心で楽ではあるが、資産規模の数パーセントなどを手数料として支払うことになる。
「仕事では、相手と丁々発止のやりとりをしているのに、投資では相手の言いなりになっていませんか?」とナイトウォーカーさん。インデックスファンドは相対的に手数料が安いため、自分で勉強して買わなければ、積極的に勧められることはない。
つみたてNISAを勧めるのは、いわゆるドルコスト平均法というよりも、途中で止めずに長期で投資を続けるためだ。「人間の心理的特性にあった方法。昔からドルコスト平均法という話はあるが、精神安定剤として役立つ点に意味がある」
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