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「データサイエンティスト・ラプソディ」 なぜ優秀なAI人材は転職するのかマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(3/4 ページ)

» 2018年12月21日 08時00分 公開

「会社に魅力がない」という問題

 圧倒的な売り手市場な世の中なので(数年先は分かりませんが)、待遇向上を期待して転職をする人もいるでしょうが、会社に魅力がないとそもそも人材は定着しません。

 いまは群雄割拠の三国志の時代ではなく、平成も終わりに近づいた日本なので「優秀な人材が辞めないように待遇と環境を改善する」という、21世紀的で堅実な施策を取りましょう。

 データサイエンティストは「データ分析をやりたい」「いろいろなデータを活用したい」「データ分析を通じて事業に寄与したい」など、自分の技術を生かすことにやりがいを感じます。つまり、会社がそれを実現できる環境を用意しないと、退職されてしまう可能性があります。

 「泥臭い仕事にも一生懸命取り組むべき」「給料をもらう立場なのに甘えるな」という意見もあるでしょう。昔は上司からのむちゃぶりや汚れ仕事を解決して出世する「島耕作」的な生き方もありましたが、いまは自分をワナにはめようとした上司と戦って“倍返し”する「半沢直樹」が人気なことは覚えておくとよさそうです。

業務に集中できる環境作りを

 新卒社員は、仕事の取り組み方や組織内での振る舞いは分かりませんし、中途入社社員は立場や権限が弱く、できることも限られます。特に年功序列や地元採用の生え抜き社員が強い社風では、新卒を下働き、中途を外様と扱いがちです。

 そうした風潮や空気を変え、データサイエンティストたちが分析に集中できるような支援をしましょう。人事というデリケートな部分を変えることは難しいですが、組織として他のメンバーが支援すれば退職率は変わります。

 職場における労働環境や組織について、問題点を下図でまとめました。

AI 職場の問題:組織編
AI 職場の問題:環境編

 「データ分析に対する理解がない」「慣習にこだわりすぎて新しいことに挑戦できる風土ではない」といった問題は、データサイエンティストの力だけではどうにもなりません。貧弱なスペックのPCやツールといった作業環境では、そもそも仕事にならないでしょう。

 こうした問題を見直さなければ、どれだけ優秀な人材を採用できたとしても、彼らが活躍するのは難しいのです。

 「わざわざデータサイエンティストを特別扱いするのか?」と思う人もいるでしょうが、苦手な部分をサポートしつつ得意分野を伸ばすのも、和を尊ぶ日本的組織の強みではないでしょうか。データ分析の結果を事業に生かすことで成果を得られる企業は少なくないはずです。

 本来の業務とは無関係な作業やルールを「新人だから」「慣習だから」という理由で押し付けても、退職までの日数を縮めるだけ。予算もデータも権限もある(ように見える)大企業に転職したデータサイエンティストが、1年後には自由に仕事ができるスタートアップにいるのはよくある光景といえます。

 新人でも下積みばかり強調せず、実務で使うデータなどで早い段階から経験を積ませるといいでしょう。サイバーエージェントやメルカリのように一律の初任給を撤廃し、職種やスキルで給与面に差をつけるのも手です。

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