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倒れない、ぶつからない “人と並んで歩ける”ホンダのロボット「パスボット」CES 2019

» 2019年01月11日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 米国ラスベガスで開催している世界最大級のエレクトロニクスショー「CES 2019」。本田技研工業は、昨年に続き、個性あふれるロボットたちを展示して注目を集めている。オープンイノベーションの提案にも続々と引き合いがある様子だ。

ホンダが展示した移動ロボット「Honda P.A.T.H. Bot」(パスボット)

 「Honda P.A.T.H. Bot」(パスボット)は、AI(人工知能)で周囲の状況を認識し、人混みの中でも障害物を避けながら移動できるロボット。縦長の繭(まゆ)のような形をした高さ約1メートル、質量21.5キログラムの筐体は前後に270度の画角をカバーする全天球カメラユニット、レーザーレーダー、地磁気センサーなどを備え、人が近づくとぶつからないように適切な距離をとる。避けきれずに人や物がぶつかってしまった場合もうまくバランスをとって倒れない。

 パスボットの開発に携わる本田技術研究所の杉山謙一郎氏(R&DセンターXのプロジェクトマネージャー 主任研究員)は「3つの種類が異なるセンサーが互いの弱点を補い合うことにより、人にぶつからない、倒れない自律移動を実現した」と語る。最高速度は時速6キロメートル。

本体の上部前後に270度ずつの撮影画角をカバーするフィッシュアイレンズのカメラユニットを搭載。全天球ビューで周辺の障害物を検知する

 AIは、カメラで行き交う歩行者の動きをキャプチャしながらデータを深層学習。人の動きを先読みし、ぶつからないためにアルゴリズムに磨きをかけているという。将来は空港や展示会場のナビゲーターなど、人や障害物を避けながら最適なルートを選択して移動できるロボットとして活躍することが期待されている。

昨年のCESにも出展した大型車両タイプの「3E-D18」

 「3E-D18」は、昨年の「CES 2018」に出展した大型車両タイプの自律移動モビリティーだ。CES出展後、すぐに引き合いがあり、現在は米国コロラド州の消防隊の機材運搬やノースカロライナ州の大規模太陽光発電所での除草作業などで活躍中。コロラド州の消防隊とはさらに、山火事など危険な場所で作業する隊員をサポートする「Autonomous Work Vehicle」(オートノマス ワーク ビークル)として活用するため、必要になる車体強度やその他の仕様を検討しているという。

上部のアタッチメントを交換して荷台などが取り付けられる。悪路も走り抜けるタフなジープのようなロボットで、最高時速40キロを実現している

 ホンダでは、ロボットの自律移動機能をさらに向上させるためのパートナー獲得への取り組みを、CES 2019を契機に強化していく考え。独自にデータ蓄積と共有、通信制御、状態遷移、ロボット間連携などの共通機能をAPI/SDK化して提供するソフトウェアプラットフォームのコンセプト「Honda RaaS Platform」(以下:RaaS)もCESに合わせて新たに立ち上げた。

ドライバーにしか聞こえない音で注意を喚起

 ホンダは「Honda Xcelerator」と呼ぶ活動を通じ、スタートアップと協調して自動運転車やクルマの安全性を高める技術の開発も進めている。例えばイスラエルのスタートアップ、Noveto(ノベト)は、ドライバーにしか聞こえない音で注意を喚起するシステムを開発した。クルマのダッシュボード周辺に指向性の高いスピーカーシステムを搭載し、サウンドビームをベースにした3Dオーディオ技術でアラート音を鳴らし、背後や側面の死角から近づく自動車の存在を知らせるという。

イスラエルのスタートアップ、Novetoが開発した3Dオーディオテクノロジーは、ドライバーの耳の位置にサウンドビームを使ってピンポイントで音声を送り届ける
衝突防止のアラートなどに活用できる技術として紹介されていた

 NovetoのHead of Softwareを務めるNoam Zafrir氏は、「スピーカーシステムと連動するカメラユニットがドライバーの顔の位置、耳の形状を認識し、正確な位置にサウンドビームを飛ばす」と説明する。サウンドビームを制御する技術には、PC用の外付けスピーカー開発などで培った技術が生きているそうだ。2020年ごろの商用化を目指すとしている。

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