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金利が投資に影響するわけ 金利は経済の体温計渋谷豊の投資の教室(3/4 ページ)

» 2019年01月28日 15時39分 公開
[斎藤健二ITmedia]

渋谷: 今の米国の金利は10年ものが3.1%ですが、10年だったら3.1%借りてもいいな、と思う人が需要側、3.1%なら貸してもいいよと思う人が供給側。これが寄り合ったのが3.1%だったということです。もっともっと借りたい人が多ければ、3.1%は安いね、3.5%でいいよねとなってくるのが需要と供給です。

米国債10年もの金利の推移

 結果として、景気がいいときは5%、6%に金利が上がっていきます。5%でおカネを借りても、私がやる中国のビジネスは10%から20%利益が上がるので5%でも借りる価値がある、とそういう人が出てくる。ほかにも私も借りたい、という人がたくさん出てくると7%、8%に金利は上がっていくわけです。

 でも、中国での事業に失敗して散々になって帰ってくる人が増えると、「おカネ借りてくれない?」といっても嫌だとなります。金利は4%、3%、2%と下がっていって、2%なら借りますよ、とやっと借りる人が出てくる。

 だから、金利は必ず波を打つんです。景気を表すのが長期金利なのです。

サイトウ: 高い金利を払っても借りたいと思う人がいるから、金利が上がる。それが長期金利ということですね。今日本はとっても金利が低いですが、それは借りたい人が少ないってことなんでしょうか?

渋谷: 日本の景気が良くないというより、10年間おカネを借りる意味合いがない。資金の需要が今の日本にはないということです。

 10年後にすごくモノの値段が上がると思っていたら、借りると思いませんか? 例えば10年後に土地が2倍になると思えば、おカネを借りてでも土地を買いますよね。でも、10年後でも値段が変わっていないと思ったら借りません。

 50%上がると思ったら3%の金利で借りてもいいと思うかもしれません。将来の経済の成長や、将来価値が上がることが見えていれば、長期金利は上がるんです。長期の見通しが悪いと下がります。

短期金利と長期金利のバランスを見る

サイトウ: なるほど。でもなぜ短期金利と長期金利を分けて考えるんですか?

渋谷: 短期の需要と長期の需要のバランスを見るのが大事なんです。

 短期が2%、10年が5%だとすると、今よりも10年後が3%くらい成長していると、市場関係者が見ているということで景気がいい状態です。でも、今、市場が加熱して短期は5%だけど、10年後の金利が2%だったらどうでしょう? 短期金利は高くて加熱しているけれど10年後はきっと今より悪くなっているんだな、と思っているから景気は悪くなっていく。

 この短期と長期の金利を結んだ線を、イールドカーブと言うんですが、この形がどうなっているかによって景気が分かると言われています。

サイトウ: 金利は絶対値ではないんですね。

渋谷: そうですね。例えば今短期が8%で長期が10%なら、景気がいいというよりあまり変わらないんだな、と思います。今2%で長期が20%なら、いずれすごく景気がよくなるか、すごいインフレになるかのどちらかです。

 金利というのは、世の中の形を表しているものです。2018年ほど金利が世の中に認知されて興味を持たれたことはないと思います。18年の2月と10月に起こった米国株の大暴落は、両方、米国の金利上昇が引き金だからです。

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