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» 2019年01月31日 07時00分 公開

「市場縮小、腹を括っていた」 シャツ工場、ネット注文「カスタムシャツ」で復活

「ドレスシャツの市場縮小は、ある程度仕方ないものと腹を括っていた」――アパレルメーカー、フレックスジャパンの矢島隆生社長はそう悩んでいた。しかし”希望の光”が差し始めた。ネット上で顧客が注文する「カスタムシャツ」の需要拡大だ。

[片渕陽平,ITmedia]

 「ドレスシャツの市場縮小は、ある程度仕方ないものと腹を括っていた」――シャツの製造を手掛けるフレックスジャパン(長野県千曲市)の矢島隆生社長はそう話す。フォーマルな場で着用されるドレスシャツは、企業内の服装規定が緩和される、といった影響を受けて国内市場が縮小。さらに日本市場でも通用する品質のドレスシャツを生産する工場が海外で多く登場し、矢島社長は「慢性的に厳しい価格競争に曝される」と頭を悩ませていた。

 そうした中、“希望の光”が差し始めた。顧客が自分の好みでパーツを選んで注文する「カスタムシャツ」の需要拡大だ。同社の長野工場に目を着けたのは、米国ベンチャーのOriginal(サンフランシスコ)。シリコンバレーで働くエンジニアの「服を買いに行くのが面倒くさい」という意見から2015年に創業。Webサイト上で袖やボタンなどを自由にカスタマイズできるシャツ「Original Stitch」を展開している。

 Originalのジン・コーCEOが、フレックスジャパンの長野工場にほれ込んだのは2013〜14年ごろ。米国、日本の顧客から受け付けた注文を、フレックスジャパンの長野工場で裁くことにした。工場では約100人の職人が手作りで1日におよそ300枚のシャツを製作している(2017年7月時点)。

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工場で約2週間、工員と一緒に過ごした

 「カスタムシャツは1着1着の採寸結果が異なり、既製品を大量生産する場合とは全く異なるノウハウが求められる」――ジンCEOはそう話す。アジアを中心に工場を見学したというが、日本以外では「1着1着のクオリティーが高く、適正価格で作れる技術、キャパシティーを備えている工場がなかった」という。

 ジンCEOはフレックスジャパンの工場で約2週間、工員と一緒に過ごし、縫製工場のバックエンドのシステムを“勉強”。顧客の採寸データを自動裁断機に手入力していたのを、注文情報から自動入力するようシステムを開発するなどして、製造を効率化する手伝いをしたという。

photo ジンCEOはフレックスジャパンの工場で約2週間、工員と一緒に過ごした

 フレックスジャパンの矢島社長は「当初は、オーダーシャツというのは一部の人達のための特別なシャツ、ニッチな市場商品と考えていた」と振り返る。しかし「消費者がネット上で自分好みのシャツをデザインして購入する」というジンCEOのアイデアに対し、矢島社長は「面白い考え方であり、否定すべき理由もなかった」として提携を決めた。

「慢性的な価格競争から抜け出せる」

 Originalは、スマートフォンのカメラで正面と側面の写真を撮ると、全身16カ所を自動採寸できる技術も開発している。外部のECサイトなどに技術提供し、他社とともにカスタムシャツの市場全体を広げていく考えだ。ジンCEOは「(こうした取り組みが)返品率の軽減、リピート率の向上につながる。生産する工場側にはオーダーが増えるメリットがある」と説明する。

photo Originalのジン・コーCEO(写真中央)

 矢島社長は「日本市場でオーダーシャツの需要が大きく伸びれば、国内工場の規模を維持、増強が可能になり、新しい日本人技術者の育成もできる」という。既製品と異なり、オーダーシャツに対応できる工場は限られているといい、「既製品の慢性的な価格競争からは抜け出せる」と期待を寄せている。

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