「スマホ『動画SNS見放題』、一部規制へ 総務省」――朝日新聞デジタルが2月19日朝配信したこんな記事が注目を集めている。
特定の動画サイトやSNSを利用した際のデータ通信量をカウントフリーにする携帯キャリアのプラン(「ゼロレーティング」と呼ばれる)について、総務省が電気通信事業法に基づく指針を作り、一部を規制する方針を固めたという内容で、「動画SNS見放題」がTwitterトレンドトップになるなど話題になっている。
この記事は、総務省の有識者会議「ネットワーク中立性に関する研究会」の議論を基に書かれたようだ。20日に開かれる第7回の会議で中間報告書案が出され、規制の方向性も盛り込まれるという。どんな規制になりそうなのか。総務省に聞いた。
――「動画SNS見放題規制へ」の記事が話題だ。どんな規制か?
ゼロレーティング(カウントフリー)は新しいサービスで、「まず規制ありき」は望ましくない。だが、新しいサービスだけに、完全に自由だと、行き過ぎがあるかもしれない。行き過ぎないようなルール・基準が必要だ。事業者から「どこまでなら大丈夫なのか、事前に知りたい」という要望もある。
そのため、電気通信事業法上「ここまではOK、ここからはダメ」といった、解釈の指針を作ろうと考えている。新しく法律を作るのではなく、現行の法規制に照らし、ダメな事例などを示すガイドラインを作るイメージだ。
白黒は付けられないがグレーな案件については、業界で議論し、自主規制のルールを定めてもらう形になるだろう。そのルールが適切に守られているかというチェックには、行政が関与することになるだろう。
――どういった例がNGになるのか?
NGになる例としては、支配的な立場にある事業者が、他社を排除するような形態だ。競争法(独占禁止法)上の問題が出る。
例えば、キャリアAが動画サービスBをカウントフリー対象にする場合、キャリアAから動画サービスBに対して、「ほかのキャリアとは契約しないように」と強制する、といったことはあってはならない。逆に、動画サービスBがキャリアAに対して、「ほかの動画サービスとは契約しないように」と強制することも良くない。
電気通信事業法の問題としては、「利用の公平」がある。ネットワークは公平に利用可能でなくてはならない。例えば、キャリアAが、動画サービスBには回線を提供するが、動画サービスCには提供しない、といったことを行えば、公平性に反する。
――既存のカウントフリーサービスで、問題ありそうなものはあるか?
個別のサービスは分析はできてないが、いまの時点でダメだと分かっているサービスはない。問題があるかどうかは、業者間の契約を見ないと分からないこともある。会議では、それをモニタリングしよう、という提言もあった。
――報告書案はどんな内容になりそうか
ゼロレーティングについては、第6回目の会議で初めて深い議論を行った。名古屋大学大学院法学研究科教授の林秀弥さんから資料(PDF)が提出され、その内容に各委員も同意していた。20日に提出する報告書案も、この資料の「結論」と似た内容になる。
報告書案のベースとなる資料は、PDFで公開されている。
資料の「結論」では、「ゼロレーティングは萌芽的なサービス、まず規制ありきではない」との前置きした後、課題を指摘する。
その上で、ゼロレーティングが競争政策上「問題ない」とされるためには、(1)特定の者に対する差別的扱いがされていないこと、(2)他の競争事業者を排除又は弱体化させるための不適切な料金設定がされていないこと、(3)MNOによるコンテンツプロバイダ等の囲い込みを含め、事業者間で不当な競争が引き起こされていないこと、(4)市場支配力を有する電気通信事業者等による、市場支配力の濫用による行為がされていないこと――を挙げている。
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