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» 2019年02月21日 00時05分 公開

新規事業立ち上げのノウハウを社外にも 動き出したソニーのスタートアップ支援プログラム「SSAP」

ソニーがスタートアップ支援に本腰を入れる。過去5年間で33件の新規事業を立ち上げた同社の新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(SAP)の枠組みを社外にも提供し、オープンイノベーションを進める。

[芹澤隆徳,ITmedia]

 ソニーは2月20日、起業家や企業を支援する「Sony Startup Acceleration Program」(SSAP)を発表した。過去5年間で33件の新規事業を立ち上げた同社の新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(SAP)の枠組みを社外にも提供し、オープンイノベーションを進める考えだ。

ソニー、Startup Acceleration部の小田島伸至統括部長

 「オープンイノベーションというと、これまではアセットの活用や出資によって実現するのが基本だった。そこに“環境の提供”という新しいアプローチを提案する」と話すのは、ソニーでStartup Acceleration部の統括部長を務める小田島伸至氏。SSAPはソニーがSAPで培ってきた起業のノウハウや開発環境を提供し、アイデアのブラッシュアップからプロトタイプの開発、事業計画の作成などを3カ月間で行うカリキュラム。「あらゆる人に起業の機会を」をスローガンとしている。

3カ月間のスケジュール

 プロトタイプの開発にはソニー本社にあるワーキングスペース「Creative Lounge」などを活用し、「アクセラレーター」(加速支援者)が支援する。アクセラレーターにはエンジニアやデザイナーなどさまざまな分野のプロフェッショナルが在籍しており、事業の立ち上げ経験も豊富だ。彼らが“伴走”して事業立ち上げの環境を整える。

 環境の重要性についてはSAPの経験で知ったと小田島氏は話す。SAPで商品化を果たしたスマートウォッチ「wena wrist」は、「紙一枚からスタート」した。2014年に入社一年目のエンジニア、對島哲平氏がSAPの社内オーディションに応募した際、提出したのがたった1ページの企画書だった。「最初は落とそうと思っていた」という小田島氏だが、熱意のこもったプレゼンテーションを聞いて考えを変えた。同時にプレゼン資料作りなど、エンジニアが不得意な部分を支援する人や環境の必要性を感じたという。

「wena wrist」の開発者、對島哲平氏

 SSAPでもソニー主催のオーディションなど複数の評価制度を設ける計画で、事業性があると判断すれば事業化もサポートする。商品を販売する場合、ソニーのクラウドファンディングサイト「First Flight」の他、過去のSAPプロジェクトで開拓してきた100以上の販路を活用できるという。さらに製品が世に出た後、事業をスケールさせるための協業や資金調達計画の策定までも支援の対象としている。

 「新しいものを世に出したい起業家、クリエイターの課題を一緒に解決していく。プログラムの中で(事業としての)形を整え、内外の投資家に紹介したい」(小田島氏)

 なお、スタートアップ支援という内容のため、かかる費用はケースバイケースだ。最初のカリキュラムには「数百万円程度」(3カ月間)かかる見込みだが、「学生やNPOの場合は一部持ち出し(ソニーの負担)の可能性もある」という。事業が大きくなった場合には財務状況などを見ながら負担を求めていく。ソニーとの協業になる場合はレベニューシェアなどの形も検討する。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントに移管した知育玩具「toio」は「SAPを卒業した例」として紹介。ゲームのノウハウが豊富なSIEで商品の改良を進め、プログラミングが身につく新しいタイトルを開発した

東大に社会連携講座を設置

 SSAPでは産学共同のプロジェクトもスタートしている。ソニーは同日、東京大学と社会連携講座の設置に関する契約を交わし、4月から東京大学大学院工学系研究科のカリキュラムにSSAPの枠組みを導入すると発表した。新規事業の立ち上げ経験のあるソニー社員が非常勤講師となり、新規事業のアイデアを生むワークショップや、考え方とスキルを身につけるトレーニング、アイデアを磨くオーディションなどを実施するという。

 小田島氏は、「最近ではさまざまな分野で若い方が早期に才能を開花させている。優れたアイデアにはSSAPで事業化検討の機会を提供し、ともにイノベーションを起こしていきたい」と話している。

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