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「本当の失敗は、途中で諦めること」 AI開発は失敗に学べ、ミクシィが“ゼロからの挑戦”で得た教訓これからのAIの話をしよう(カスタマーサポート編)(3/4 ページ)

» 2019年02月22日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

思わぬ落とし穴、見つかる新事実

 学習結果が良かったにもかかわらず、本番環境で試験導入したところ、AIの精度は実運用に耐えるレベルではなかった。

 さまざまな原因を考えたが、豊川さんは教師データに問題があるのではと疑い、詳しく調べた。すると、「そもそもCSスタッフの分類自体が、人によってブレがある」ことが分かった。人間が明確な基準で判断できていないものは、当然AIにも判断できない。

 また、1件のメールの中で複数の要素を含んでいる場合も分類基準が難しい。「そもそも、教師データに信頼性がなかった」(豊川さん)のだ。

 エンジニアだけでなくCS部門のマネジャーも「CS現場の業務はシステマチックになっている」と信じて疑っていなかったため、誰もがこれは自動化できるだろうと考えていた。そこに落とし穴があった。

 豊川さんは「やはりCS現場とのコミュニケーション不足が失敗の大きな原因だと思います。そこでドメイン知識が不足し、データの異変に気付けませんでした」と振り返る。

 しかし、全てが失敗に終わったわけではない。「今回のプロジェクトで得たものは大きかった」と豊川さんは前向きだ。

“駆け抜けた8カ月”で得たもの

 「正直、最初から全てがうまくいくとは思っていませんでした。小さく始めて素早く失敗するのが成功への近道だと信じています」――豊川さんは、力強く語る。CREグループで約8カ月にわたる長期プロジェクトを行うのはこれが初。新しい技術に対して前向きに取り組むエンジニアばかりだったので、最後までモチベーション高く駆け抜けられたのは自信になったという。

 今後、CS業務の自動化を考える上でAI活用は重要なポイントになる。その第一歩としては十分な感触を得られたようだ。CREグループでは改善点を見つけ、既に新しいアプローチに取り組んでいる。

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