乱立気味の決済サービスだが猫も杓子も「なんとかPay」だ。それでも決定的とも思える「Pay」という決済サービスが登場しない理由は何か? 知財問題に詳しい弁理士の栗原潔氏に解説してもらった。
プレジデントオンラインの記事によれば、ソフトバンクグループの孫正義社長は、決済サービスの名称として「Pay」という単語にこだわり続けたが、それでは商標上の問題があるため、結局「PayPay」という名称を選択したということです。
「Pay」の商標登録にどのような問題があるのでしょうか?商標法3条1項1号には「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は登録できないことが明記されています(「役務」とはサービスのことです)。決済サービスにおいて、Payは、その役務の普通名称と考えられるので商標登録できない可能性がきわめて高いです。
これは考えてみれば当たり前のことで、商品やサービスの普通名称を商標登録して特定の人が独占できてしまえば明らかに問題です。例えば、大型画面を持つ携帯電話機のことをスマートフォンと呼んで良いのはX社だけ、他社が使うと商標権侵害ですという状況を考えればわかります。
ここで、「その商品又は役務の普通名称」という記載には注意が必要です。商標を使用する商品やサービス(指定商品・役務と呼びます)との関係において普通名称というパターンがダメということです。例えば、林檎を指定商品として「アップル」を商標登録することはできません(林檎を「アップル」と呼んでいいのは特定の企業だけとなってしまえば大問題なのは前述のとおりです)が、アップルはコンピュータと直接関係ない言葉であるため、コンピュータを指定商品として「アップル」を商標登録することは可能です(もちろん、今出願してももうアップルに取られているのでできませんが)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR